クルマニュース

投稿日: 2012.01.10 00:00
更新日: 2018.02.16 06:45

ビートルの電動コンセプト、Eバグスターが登場


Eバグスター
北米国際自動車ショーで世界初公開

Eバグスターを世界初公開: 完全に電動化されたビートル

85kWの電気モーターで駆動されるビートルのコンセプトモデル
2シーターのスピードスターとして企画されたゼロエミッションビークル

2012年1月、ウォルフスブルグ/デトロイト:
多くの人にとって、ザ・ビートルは、新しい時代におけるもっとも親しみやすいクルマではないでしょうか。自動車の世界におけるアイコンの継承者。その世界へのお披露目は、2011年4月にニューヨークを初めとした世界3ヶ所で同時に行われ、10月には販売も始まりました。それ以来、147kW/200PSのパワーを持つ史上もっともスポーティなザ・ビートルをはじめ、様々なエンジンバリエーションのザ・ビートルが町を走り始めています。ザ・ビートルは、どのモデルでも機敏な運動能力を発揮するよう設計されているため、よりパワーの小さいモデル(米国では125kW/170PSから、ヨーロッパでは77kW/105PSから)でも充分に走りを楽しめるモデルに仕上がっています。

そして今回、デトロイトで開催される北米国際自動車ショー(通称:デトロイトショー)において、フォルクスワーゲンは、純粋な電気ドライブを採用しても、ザ・ビートルのスポーティな特徴は変わらないことを証明しようとしています。Eバグスターは、まさにこの目的のためにデザインされました。このきわめてシャープなボディプロポーションを備えた、ザ・ビートルをベースとした2シーターのスピードスターは、85kWのモーターを備え、ゼロエミッションで0〜100km/hを10.9秒で加速します。

クリーンな未来のためのブルーeモーション
Eバグスターの心臓部に収まる電気モジュールは、革新的な設計がなされています。重量はわずか80kg。電気モーターに供給する電力は、フロントシート後方の邪魔にならない場所に置かれたリチウムイオンバッテリーに蓄えられます。このバッテリーの28.3kWhというエネルギー容量は、都市での利用を前提に、最低でも180kmの航続距離を確保するのに充分な値です。さらに、米国のように国土が広大な国でも、この航続性能は大多数の自動車通勤者にとって、職場と住まいを往復するのに充分と考えられます。Eバグスターには急速充電の機能も備わっていますので、設備の整った充電ステーションに行けば、35分以内に充電を完了することが可能です。また自宅であれば、Eバグスターのバッテリーを、米国で一般的な120Vの家庭電源(ヨーロッパであれば230ボルト電源)から充電することができます。充電ケーブルの取り付け口は、Cピラーの近くにある通常のフューエルリッドの下に設置されています。

アウディ、BMW、ダイムラー、ポルシェ、フォルクスワーゲンといったドイツの自動車メーカーと、米国のパートナーであるフォード、ゼネラルモーターズ/オペルが協力して新しく開発した「複合充電システム(Combined Charging System)」により、Eバグスターは、既存のどの方式にも対応して、バッテリーの充電を行うことができます。可能な充電方法は、以下のとおりです。
・交流電流による単相充電
・充電ステーションでの超急速直流充電

将来的には、各メーカーおよび全世界で共通した、電気自動車用プラグコネクターの工業規格を制定していくことが必要になるでしょう。プラグコネクター以外にも、同様な規格化が必要なものはたくさんあります。複合充電システムにおいては、充電コントローラーとその構成部品が、あらゆるタイプの充電システムに対応できるようにしなければなりません。その結果コストが削減され、電気自動車の世界規模での普及が促進されることになるのです。

ブレーキ中のバッテリー充電
Eバグスターのドライバーが走行中にどれだけのエネルギーを要求しているのかは、「エレクトリックペダル」(アクセルペダル)を介して、パワーディスプレーに表示されます。このメーターにはまた、航続可能距離とバッテリー残量も表示されます。さらに、ビートルの新しい装備として、エネルギー回生の状態を示すメーターも装着されています。エネルギー回生とは、ブレーキエネルギーの回収を意味しており、ドライバーがアクセルペダルから足を離すか、もしくはブレーキを踏んだ瞬間から、クルマの慣性エネルギーが電力に変換されてバッテリーに蓄えられます。それによりEバグスターの航続距離が延長されることになります。ちなみに、フォルクスワーゲンは純粋な電気ドライブユニットをブルーeモーションと呼んでいます。2013年には、ゴルフなどで、この名前を使ったドライブユニットが生産開始される予定です。

コンセプトが現実の形に
バグスターという名前はどこかで聞き覚えがあるのではないでしょうか。そう、ラグスターです。ラグスターが発表されたのは2005年1月、場所は同じデトロイトでした。フォルクスワーゲンは、ラグスターという名のもと、スウェプトバックラグトップ(折りたたみ式キャンバストップ)を備えたニュービートルのスピードスターを発表したのです。それは、よりワイドで低く、スポーティな、将来のビートルを暗示するデザインコンセプトでした。2005年の時点では、その実現性に関し、フォルクスワーゲンは「アイデアとしてはありえる」という返答をしていました。それが2012年においては、一歩進んで「可能性がありえる」に変わりました。なぜなら、ラグスターの、ワイドで低く、スポーティなビートルというコンセプトは、2011年10月に新しい「ザ・ビートル」が発売されたことで、(ラグトップを除いて)現実のものになったからです。それでは、Eバグスターの名前が意味しているものは何でしょう?その説明は簡単です。頭に付けられたEはもちろん、電気ドライブの意味です。「バグ」は米国におけるビートルのニックネームであり、「スター」は、オープントップ2シーターを表すスピードスターから採用しています。

スポーツカーのプロポーション
Eバグスターは、ビートルとしてこれ以上望めないほどダイナミックなスタイルを備えています。実際、このクルマはスポーツカーなのです。全高は1,400mmに過ぎず、ハードトップ仕様の通常のザ・ビートルと比べると90mmも低くなっています。生産仕様のザ・ビートルも、すでにシャープなプロポーションとパワフルなスタイルを持っています。Eバグスターはそれよりも30mm広く(全幅は1,838mm)、一方で全長(4,278mm)は生産仕様と同じであり、結果として、どの角度から見ても、とてもユニークでダイナミックなスタイリングに仕上がっています。生産仕様のデザインディテールに、様々な新しいスタイリング要素が追加され、路上に佇む姿は、まるでひとつの鋳型から作られているかのようです。これには非常にシンプルな理由があります。2011年10月に発売された生産型モデルを開発する段階で、ザ・ビートルのデザインチームの脳裏には、将来におけるあらゆる派生モデルの可能性が描かれていました。電気モーターを備えたスピードスター、Eバグスターのアイデアも、そのなかで発展していったのです。

フロントおよびリアデザイン
Eバグスターのフロント部分でまず目を引くのは、後方に傾斜した幅広いフロントウインドーでしょう。そのガラスは、Aピラーの上のポイントまで横に伸びています。LEDヘッドライトを備えたEバグスターは、生産型のザ・ビートルのものから大幅にカスタマイズされたバンパーによっても識別することができます。デザイナーは中央のエアインテークの左右に、LEDをCの文字(当然ながら右側では逆向き)を描くよう線状に並べたデイタイムランニングライトを設置しました。e-up!(コンセプトカー)が発表されて以来、この形のデイタイムランニングライトは、フォルクスワーゲンのEVスタディのひとつのサインになっています。これらのスタリング要素はまた、やはりデザインに手が加わっているリアバンパーのリフレクターに、少し違った形でリフレインされています。また、Eバグスターのリアウインドーは非常にワイドな設計になっており、スピードスターだからといって、小さなリアウインドーによって視界が制限される必要はないことを示しています。

サイドビュー
スピードスターにとって傾斜の強いウインドーと低いルーフは必須であり、Eバグスターもそれらを採用しています。まずはこのクルマのサイドビューを見ると、ビートル特有の膨らんだホイールハウジングのなかに、18インチの「ツイスター」デザインのホイールから派生した20インチの大型ホイールと235/35R20タイヤが収まっています。そして、前後のフェンダー間のボディサイドには、史上もっとも有名なビートルの証である「V」のサインが見られます。サイドシルから上に、広くて平坦なドアの表面と、ドアハンドルの周りのナイフで抉られたような窪みに視点を移していくと、そのポイントから数センチ上から、ザ・ビートルがスピードスターに変化しているのが分かるでしょう。デザイナーは、ウインドー下端のクロームのストリップを、リアまで延長しました。その結果、このストリップはAピラーから反対側のAピラーまで連続するようになりました。「バグ」のハードトップは、このクロームのラインの上に、低いアーチを描いて伸びています。サイドウインドーの上端は、古典的なスピードスター様式のルーフの半円を描いています。ウインドー下端のクロームからルーフラインの頂までの高さはわずか400mmですが、スピードスターとしては、あるべき姿といえるでしょう。

進歩的なインテリア
ハイテク装備とダイナミックなパフォーマンスの融合は、インテリアにも見られます。スポーツシート、ボディ同色にペイントされ後方まで続くセンタートンネルが、Eバグスターのスポーティなキャラクターを表現しています。アルミ製ドアハンドルやベルトガイド、軽量化を意識したステアリングホイールのデザインなどはまた、エクステリアとのつながりを強く意識させます。Eバグスターは始動方法も独特で、スタートボタンを押すと、ドライブシステムが立ち上がるだけではなく、それをきっかけにライトによる一種のショーが始まります。室内は初めは白い光に包まれ、それから光はブルーに変わっていきます。それは、メータークラスター内の光の点滅から始まり、そこからわずか1mmの細い光線が伸びて、ドアウインドーシルやエアノズルの周りを辿り、Eバグスターの目覚めを視覚的に演出します。


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