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投稿日: 2020.01.29 14:24

WRC:オジエのトヨタ初戦は総合2位。移籍で生まれた“未知なるエリア”


ラリー/WRC | WRC:オジエのトヨタ初戦は総合2位。移籍で生まれた“未知なるエリア”

 オジエにとって想定外だったのは、チームメイトであるエルフィン・エバンスの予想以上のスピードかもしれない。エバンスのターマックでの速さは誰もが知るところで、2019年はツール・ド・コルスでヌービルと最後まで優勝を争った。

 戦闘力が劣るとされるフォード・フィエスタで優勝にあと一歩まで迫ったのだから、ターマック最速と誉れ高いヤリスに乗れば、確実に速いことは分かっていた。しかし、初戦の序盤で、オジエを抑えての3連続ベストタイムを刻み、首位に立ったのは、予想を超える活躍だった。

 さすがに危機感を覚えたのか、オジエは反撃に転じた。金曜日午後のステージで2本のベストタイムを記録。最後のステージでエバンスを抜き、首位の座を奪還した。そこまで、しっかりとマージンをとって戦い続けたのは間違いなく正しかったと言える。

ヒュンダイに移籍したタナクが競技2日目のSS4で高速域からコースオフし、マシンは回転しながら大破した。幸い、クルーは無事でタナクも25日にはサービスパークに戻って顔を見せていた
ヒュンダイに移籍したタナクが競技2日目のSS4で高速域からコースオフし、マシンは回転しながら大破した。幸い、クルーは無事でタナクも25日にはサービスパークに戻って顔を見せていた

 初めてのマシンであるヒュンダイi20クーペWRCを駆り、トップ3を争っていたオィット・タナクはSS4で超高速クラッシュ。路面のバンプであおられて接地を失い、きりもみ状態で木や石に当たり、クルマは大破した。

 トヨタ時代もタナクはほかのドライバーより低い車高を好み、サスペンションのストロークとのバランスを緻密に詰めていた。しかし、クルマが変わり、フルバンプした状態でのダンパーの動きが彼の予想とは少し違ったのかもしれない。

 限界ギリギリの状態での微妙なセッティングの違いがミスを引き起こした可能性はある。オジエは、そういった未知なるエリアになるべく踏み込まないよう、自制心を持って戦い続けていたのだ。

 しかし、2019年のトップ3ドライバーのなかで唯一クルマを乗り換えなかったヌービルが土曜日から反撃に転じた。ベストタイムを連発し、総合3番手からひとつずつ順位をアップ。最終日の日曜日2本目でついに首位へと躍り出た。

パワーステージフィニッシュ後のインタビューを受けるオジエ。パワーステージのスタート前はエバンスから1.5秒差の総合3番手だったが、同ステージで1.7秒逆転し、総合2位となった
パワーステージフィニッシュ後のインタビューを受けるオジエ。パワーステージのスタート前はエバンスから1.5秒差の総合3番手だったが、同ステージで1.7秒逆転し、総合2位となった

 2019年との違いは、オジエから追われる立場で最終セクションを戦ったことだが、モンテマイスターの追撃をしのぎきった。6年連続勝者のオジエを抑えての優勝。最終SSをトップタイムで走り終えたヌービルは、興奮のあまりクルマのルーフをバンバンと激しく叩いて凹ませ、最後はルーフの上に寝そべって喜びを表現した。

 タイトルと同様モンテの連勝が「6」でストップしたオジエはわずかに悔しさを滲ませながらも、極めて冷静に結果を受け入れていた。2番手に着けながらもWRC2勝目をつかめなかったエバンスのほうが、失望感は大きいように見えた。

 オジエとエバンスはともに土曜午後から失速したように見えるが、ふたりともヤリスのパフォーマンスには満足しており、セッティングに関してもダンパーの減衰力程度しか変えなかったという。

 それくらいクルマのバランスは良かったのだが、それでもヌービルに逆転を許したのはセッティングの完成度の違いに理由があるのかもしれない。同じクルマに乗り続け、隅々まで理解しているヌービルと、未知なる領域を多く残すオジエとエバンスの微妙な差が、ポディウム1、2段分のギャップになったのだろう。

「たしかに勝てなかったのは残念だが、クルマに対する理解がさらに深まったし、タイトル争いに向けてはいいスタートになったと思う」とラリーを振り返ったオジエ。その眼には王座奪還への固い決意が感じられた。


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