更新日: 2023.07.26 20:48
トライトンの第一印象は「結構走れる」とAXCR初参戦の田口勝彦。ドライバーを成長させる“増岡流”愛のムチ
起用した3人のドライバーの印象や期待感については、「(2022年の総合優勝を経て)さらにスキルが上がって、非常に自信を持ってクルマを操っている」とヨーターを評価。また、新たに起用した田口にしても「実績充分」と評し、「スピードと実力を兼ねたドライバーです。アジアを拠点に長くランサーエボリューションで頑張ってくれて、ジャングルの中のぬたぬたのマッディな路面を相当走り込んでいると思うので、期待するところは大きいです」と続けた。
一方で、昨年がクロスカントリーラリー初挑戦となったサンガーには、成長を願う想いから熱血指導が飛び出した模様だ。
「彼は『自分でここまで』とバリアを作ってしまうドライバーなんです」と総監督。「テストで彼の横に乗ったとき、大きなジャンピングスポットで『ブレーキ踏むな! アクセル踏んだまま行け』と言って……大ジャンプの後に『ほら、行けただろ』と」
「そうやって殻を破ってやるのもドライバーを速くするひとつの秘訣だと思うので、彼は今年また、ひとつ成長したと思います」
■ガソリン車とディーゼル車での走らせ方の違いに直面
昨年のサンガーと同様に、クロスカントリーラリーに初めて挑む田口は、テストでステアリングを握った新型トライトンにポジティブな印象を抱いている。田口曰く、タイでのテストはチームメイトたちが「本番よりも過酷」と言うほど非常に過酷な路面だったが、そこでの第一印象は「結構走れるぞ」というものだったという。
トライトンは彼がこれまで乗ってきた市販車タイプのラリーカーとはタイプが大きく異なるため、そこに不安も感じていたという元APRC2冠王者。しかし実際には「非常に乗りやすく、ぱっと乗ってそれなりに走れてしまう。そういう状態でしたので自信になりました」と彼は語った。
対してドライビングの修正を要する点としては、エンジン特性からくる走り方の違いを挙げている。WRCやAPRC、ダートトライアルなどで活躍してきた田口は、過去にディーゼルエンジンを搭載した競技車両をドライブした経験がなかった。そのため、今回のテストではコドライバーシートに座った総監督から“回しすぎ”を指摘されたという。
「私はこれまで、競技でディーゼルエンジン車を走らせたことがないんですね。今回増岡さんが横に乗って指摘されましたけど、やっぱりついついエンジンを回しすぎてしまう。僕らがやってきたのはエンジンが絶えずタイヤを掻いている状態で乗るラリーで、タイヤがある程度とろとろっとグリップしているようなところ、下の回転で走るということをしたことがないのです。ただし(トルクのあるディーゼル)エンジンの特性上、その方が速いコーナーがあるんですよね。そこのところを本番では2日くらいで学んでいきたい思っています」
「ハンドリングについては別になんとも思わないくらい乗りやすかったですし、重量もウエットではまだ走っていませんがドライではブレーキングポイントもちゃんと合わせていけてましたから、それも問題ないと思います」
人生初のクロスカントリーラリーに保井隆宏とのコンビで挑戦する田口は、ラリーの序盤を学習に充て後半に巻き返しを図るつもりだ。
「全体的に結構行けるなんじゃないかという手応えもあり、この後まだ走っていないハイスピードのところなどは本番でアジャストしていきます」と51歳の田口。
「もちろん、初めてですから序盤はゆっくり、後半に向けてだんだんペースを掴んでいき、自分の得意するハイスピードなフラットダートでタイムを稼いでいって……昨年に引き続き2連覇を目指すミツビシチームに貢献できたらいいなと思っています」と意気込みを語った。
■チーム三菱ラリーアート AXCR2023参戦体制
総監督:増岡浩(三菱自動車)
チーム代表:シャユット・ヤンピシット(タイ:タントスポーツ)
テクニカルディレクター:コーポン・アマータヤクン(タイ:タントスポーツ)
テクニカルサポート:
相羽規芳(三菱自動車:車体)
柴山隆(三菱自動車:エンジン)
ドライバー/コドライバー:
チャヤポン・ヨーター(タイ)/ピーラポン・ソムバットウォン(タイ)
リファット・サンガー(インドネシア)/シューポン・シャイワン(タイ)
田口勝彦(日本)/保井隆宏(日本)