ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2024.12.24 17:38
更新日: 2024.12.24 17:39

【知られざる欧州コースマーシャルの実態(2)】2500人が各国から集うル・マン24時間。厄介な駐車パスと気になる懐事情


ル・マン/WEC | 【知られざる欧州コースマーシャルの実態(2)】2500人が各国から集うル・マン24時間。厄介な駐車パスと気になる懐事情

──ところで、失礼を承知で懐事情を伺いたいのですが、ル・マンではコースマーシャルの方は有償でお仕事をなさっていらっしゃるのでしょうか、それともボランティアなのでしょうか?

ヴェルナー:世界各地からル・マンへ集まるコースマーシャルたちは、すべての経費を自費負担で参加する完全なボランティアです。コースマーシャルの各自の本業はさまざまですが、私も妻も会社員ですから、ル・マンはもちろんWECもMotoGPも他のレースも有給休暇を利用して参加しています。

 ドイツの国内のサーキットではコースマーシャルには少しの日当やランチバックが支給されたり、場合によってはボーナスが支給されたり、食事会に招待して頂けることもありますが、ドイツ以外の国は一切ありません。外国ではたまに観戦チケットを頂けることがありますが、たとえ頂いたとしても私たちはコースマーシャルの仕事がありますので、一般の観覧席でレースを観戦することはできません。

──ル・マンでのコースマーシャルのみなさんの食事事情や、班の様子を教えてください。

ヴェルナー:ポストごとに班長がいてシフト表を作成したり各ポストを取りまとめますが、他にも食事や休憩ができるスペース用のテントや冷蔵庫、レースをコースサイドでも観られるようにテレビモニターやバーベキュー用のコンロ等の備品の調達を担当する人、必要な食料品や飲み物の調達をする人など、各自役割分担があります。

 私たちのP8-P9の食事は、毎回50食程度を用意する大所帯です。自宅から通うコースマーシャルであればテントやキャンピングカーで宿泊して自炊をする必要はありませんが、私たちのように全員が遠方から来るポストではレースウイークを健康で安全に乗り切れるように、自分たちで努力しなければなりません。ですから、ル・マンの仲間は長年一緒にレースを見守り、そして寝食をともにする、大切な友であり、いわば家族と同じ存在です。

【知られざる欧州コースマーシャルの実態】
2024年ル・マン24時間、ヴェルナーさんのポストのオフィシャル集合写真

──ル・マンのコースマーシャルで大変なことは?

ヴェルナー:コースマーシャルだけで相当な人数がいますし、コースサイドの担当場所には全員が自走で来なければなりませんが、パーキングチケットの数がポストの人数を賄うのに充分ではないことも多いのです。また、たとえパーキングチケットを持っていたとしても、今日は通行できても翌日はなぜかNGだったり、朝はOKで夜はダメだったりもします。私たちは買い出しや用事で外出したり仕事のためにコースサイドへ出入りしなければならないのですが、毎回のこの押し問答には困りますね。それも毎年です(苦笑)。

 また、完全手弁当のボランティアの為、コースマーシャルの年齢層は高く、後継者不足に悩まされています。

──ル・マンでの良い思い出は?

ヴェルナー:ル・マン100周年を迎えた2023年のレース前日にはコースマーシャルがスタートグリッドに全員招待されて大集合し、ACOのピエール・フィヨン会長やFIAの関係者からねぎらいのお言葉を頂けたことは非常に嬉しかったですね。また、以前はトム・クリステンセン/アラン・マクニッシュ/ディンド・カペッロが私たちのポストのテントを訪問してくれたことがあり、それも楽しい思い出です。

* * * * *

 ル・マンに限らず、世界中のサーキットにおいて、どんなに厳しい天候下でもレースの安全を見守り、迅速に対応をしてくれるコースマーシャルたちがモータースポーツへの深い情熱を持ってボランティアでレースを支えてくれることに心から感謝し、レースを楽しみたいと思う。

【知られざる欧州コースマーシャルの実態】
取材に応えてくれたカーステン・ヴェルナー氏とザビーネ夫人


関連のニュース