更新日: 2017.10.21 13:46
ダラーラ社CEOが来日会見、スーパーフォーミュラ次期車両『SF19』のコンセプト発表
安全面と同様に大きな目標となっているのがオーバーテイクのしやすさ。コンセプトの中でも触れられているように、SF19は「ドライバー同士の競り合いをより際立たせるため、他車との接近時のコントロール性を空力の見直しによって改善し、シリーズとしてのエンターテイメント性と競技性の両立を目指す」ことをリリースで明かにしている。
SF14ではオーバーテイクを狙って前のマシンの背後に付くと、後ろのマシンは前のマシンが巻き起こすタービュランスによってフロントのダウンフォースが失われ、オーバーテイクが難しくなるという問題を抱えていた。
この件について、ダラーラ社のポンレモリCEOは「SF19では空力の改善が大きなテーマとなっています。F1の空力を反映させ、特にスーパーフォーミュラのスペクタクル性を向上させるためにもオーバーテイクのしやすいクルマを目指しています。具体的にはダウンフォースを上面から増やすのではなく、フロア、下面からのダウンフォース量を増やすことで後続へのタービュランスを減らす狙いがあります。日本のマニュファクチャラー、オーガニゼーションと協力していろいろ学びながら、ベストなクルマを作っていきたいと考えています」とコメント。
今回の発表ではSF19の細かい諸元などは未定のままであったが、先日発表された、2018年から採用される同じダラーラ社とのFIA F2新型車両『F2 2018』とSF19との違いについてもポントレモリCEOは応えた。
「イメージ画像を見て頂いても分かるように、まずは車体のデザインがまったく違います。安全基準面でもSF19はコクピットの開口部などは大きくなる見込みですし、安全規定の影響があってノーズコーンの剛性を上げないといけないのですがSF19の方が車体は軽くなるでしょう」と話すポントレモリCEO。
「車体のパフォーマンス面でも違いますし、やはりF2はDRS(ドラッグ・リダクション・システム)を採用していて、スーパーフォーミュラのOTS(オーバーテイク・システム)とも違いまし、車体のコンセプトが異なります。いずれにしても、私たちはこの車両を経験してF1にステップアップするという環境を作らないといけません。ですので、F2とスーパーフォーミュラを競争させるような考えはありません」とコメント。F2とスーパーフォーミュラ、両者の関係者に気を遣ってか、はっきりとしたマシンの違いなどの明言は避けた。
また、SF19の製作コンセプトとともに、JRPの今後の運営に関してのプランも明らかされた。2020年に実用化予定の第5世代移動通信システム、通称5Gを使用し、「2021年からオンボード映像のライブ配信を実現できないか検討しています」と倉下社長。他にもバーチャル・セーフティカーのシステム導入、ドライバーの心拍数、エンジン回転数が分かるような施策など、「まさに今、どのパートナーと一緒に進めるかを検討していまして、SF19に関してはデータ発信を行える機材を積めるような準備はしてもらっています」と、倉下社長は進行しているプロジェクトの概要を明かにした。
SF19の製作スケジュールとしては今後、2018年6月にテスト車両が完成し、7月には走行テスト開始、10月に最終仕様を確定し、2019年1月から各チームにデリバリーされる予定とのこと。
昨年のストフェル・バンドーン、そして今季のピエール・ガスリーと、FIA F2とともにF1との距離がもっとも近いカテゴリーになりつつあり、世界的に存在感が増しているスーパーフォーミュラ。安全面、速さ、そしてオーバーテイクのしやすさと大きな課題があるなかで、SF19がどのような車両になるのか。世界的な評価とともに、スーパーフォーミュラのさらなる魅力アップ&ファン増加に向けた施策が最大のテーマになる。