更新日: 2018.03.15 16:00
【崖っぷち折原コラム】若年化が進むスーパーフォーミュラに挑むオールドルーキー、千代勝正の本音と手応え
感覚としてしか理解できなかったが、さすがに日本一速い男の名を継承するドライバーの言葉だと感心させられる。
そのセンスを千代に感じたのかと本山に聞くと。「まだ1日しか乗ってないわけだから、わからない。ただ、GT500でもトップタイムを出してくるし、フォーミュラに乗りたいと言うハングリーさは買いだよね」と話した。
とは言え世の中、そんなに思うように行くわけもなく、千代は2日目のテスト終盤まで思うようなタイムは出せないままトラブルからかコースアウトしてしまう。
今回の千代のチャレンジもここまでかと思い、僕はコースに撮影に出た。すると陽が傾きかけた頃、ゼッケン50の千代が走り始めた。その時は「ようやくクルマが直ったのか」くらいしか思わず、撮影に没頭した。
すべてのテストスケジュールが終わり、コースから歩いてピットに戻る。千代はどんな表情でテストを終えたのか気になり、ピットを覗いて見た。すると、チームの雰囲気がワントーン明るくなっているように思えた。
千代も、それまでの緊張した面持ちとは打って変わって充実した顔つきだ。
何事か聞いてみると、タイムを一気に詰めたとのこと。12番手タイムをマークし、「良いテストになったみたいだね」と話しかけると、「ええ、得るものの多いテストになりました。でも何より最後にタイムを出せたのが良かったです。やっぱりタイムを出して、ドライバーがチームを引っ張らないとダメですよね」といつもの力強い眼差しで話した。
ダテに海外で揉まれてきたわけじゃない。耐久チャンピオンとなり、GT500でメーカーのニッサンの看板を背負っているドライバーだ。どうすればチームが盛り上がり、自分を向いてくれるのかは、しっかりとわかっている。
本山監督の助言も大きかったと思うが、たった1日半乗っただけでタイムを大きく更新してチーム全体に「やれる」と思わせた。そしてその事を意識してやってのけたのだ。
小林可夢偉が昨年KCMGに移籍して、1年でトップチームに並ぶ速さを見せ始めた。今年は千代、本山の子弟コンビがB-Max Racing teamをトップの一角に押し上げるかもしれない。そんな戦国模様の展開を想像するだけで、今からスーパーフォーミュラの開幕が楽しみになる。
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折原弘之 1963年1月1日生まれ
1980年の東京写真専門学校中退後、鈴鹿8時間耐久レースの取材を皮切りに全日本ロードレース、モトクロスを撮影。83年からアメリカのスーパークロスを撮影し、現在のMotoGPの撮影を開始する。90年からMotoGPに加えF1の撮影を開始。現在はスーパーフォーミュラ、スーパーGTを中心に撮影している。