投稿日: 2019.08.18 20:11
更新日: 2019.08.19 20:51

トップバトルの平川とパロウの決勝背景。多様な戦略と驚きのミニマム走行作戦を考え抜いたインパル《第5戦決勝あと読み》


スーパーフォーミュラ | トップバトルの平川とパロウの決勝背景。多様な戦略と驚きのミニマム走行作戦を考え抜いたインパル《第5戦決勝あと読み》

 同じくソフトタイヤ+満タン燃料でスタートした7番手の可夢偉はソフトタイヤでできるだけ引っ張る戦略だったが「タイヤにバイブレーションが起きて、脳しんとうになりそうなくらいひどかった。タイヤが爆発してしまうんじゃないかと思って」と、ソフトタイヤをギリギリまで使い、42周目まで引っ張った。

 燃費の面で言えば、満タンスタートのホンダエンジンのパロウが38周目に燃料の限界でピットに入ったが、トヨタエンジンの平川は6〜10秒分の給油を余した状態のガソリンで37周を周回している。トヨタエンジンのキャシディが5周目に真っ先にピットインして3位表彰台を獲得したが、ホンダエンジンユーザーからは、「あのタイミングでは(ガス欠になるため)ピットには入れない」とトヨタエンジンの燃費の良さに驚いていた。コンディションとサーキットの相性もあるだろうが、燃費が今後の戦いにどのような影響を及ぼすのが気になるところだ。

 他にもユニークな戦略を採ったのが、KONDO RACINGの2台。燃料軽め&ソフトタイヤでスタートして、レース中盤にミディアムに代え、アウトラップでそのままピットインしてミディアムタイヤで1周の計測も行わずに翌周にソフトタイヤに代えるという、変則2ピットを行った。国本雄資は10位、山下健太は13位に終わって戦略が成功したとは言いがたいが、KONDO RACINGが苦手としているミディアムタイヤをできるだけ使用しない戦略としては理解できる。

 そのKONDO RACINGのさらに上を行く形でミディアムタイヤの走行距離を究極の最小限に抑えたのが、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)だ。ソフトタイヤでスタートした関口は27周目にピットインして再びソフトタイヤを装着。この時点で2ピット戦略であることが判明したが、2回目のピットインがなんと、ファイナルラップ。つまり、ピットインしてソフトタイヤからミディアムタイヤに交換してピットロードを走行中にチェッカーを受けるという、斬新な戦略を見せたのだ。

「エンジニアの提案でタイヤ交換の義務がトップのマシンがチェッカーを受けるまでなのか、それとも自分がチェッカーを受けるまでなのかレース前に確認しました」と話すのはITOCHU ENEX TEAM IMPULの高橋紳一郎工場長。関口がチェッカーを受けるまでにタイヤ交換義務をクリアし、ピットロードでチェッカーを受けた。

結果的に関口はミディアムタイヤをコース上で一度も走行させることなくレギュレーションをクリア。究極とも言えるミニマム走行戦略を考え抜くあたり、まさにレース屋インパルらしい発想だ。この戦略、最終戦の鈴鹿はピット位置より手前がフィニッシュラインのため不可能だが、次の岡山国際サーキットはピット位置から1コーナー寄りにフィニッシュラインがあるため同じ作戦が可能。もしかしたら、岡山で同様の選択をするチームが出てきてもおかしくない。

 5戦で5人のウイナー、そして多種多様な戦略と、勝つためにドライバーとチームが全力で考え抜いて戦った第5戦ツインリンクもてぎ戦。残りの2戦では果たして、どのような戦いが見られるのだろうか。


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