接近戦実現向けた次世代車両の進化を「ものすごい」と評価するJRP。一方チーム側は「いまじゃない」とコストに戸惑いも
ここまではウイングの角度調整によって試験が行われてきたが、10月の鈴鹿テストではいよいよ空力パッケージ自体を一新、“新たなルックス”をまとったテスト車両が走行を開始する。
この新パッケージについては、「エンジニアの方が見たら、シビれるデータ」(永井氏)というCFD画像をもとにした説明がなされた。


「(接近戦を実現するためには)ウイングの角度だけでは限界があり、フロントウイングからアンダーフロアからリヤウイングから見直したのが、(側面視で比較した)下の絵です」と永井氏。
データ上、「赤になればなるほどダウンフォースが抜ける、黒だとほとんど影響がない」ということで、実質的に新空力パッケージを指している下の絵では、「ここまで近づいても、ダウンフォースが抜けない。とくにクロスライン(S字など、左右に切り返していく状態)で良くなる」と永井氏は説明する。
「このパッケージで、次の鈴鹿を走ります。そのときに、いまと同じような追走をふたりにやってもらう。数字でいくと、半分くらいになるんですね、影響度が。ものすごいです(笑)。たぶん……見たことがないくらい、いいのではないでしょうか。期待しています。期待してください」

ただし鈴鹿で投入される空力パッケージは、『来年以降の最終仕様ではない』のだという。
「今回良かったと思っているのは、すべてのサーキットでテストでき、サーキットごとの特性をしっかり把握したこと」と上野社長は総括する。
「ふたりのドライバーにしっかりと評価していただき、データと彼らのフィーリングが一致したことに手応えを感じていまして、エンターテインメント性の向上という面においては、意義のあるテストができたと思っています。10月の鈴鹿のテストでは、そういったプロトタイプを使って……まだこのあともいろいろと課題があると思いますので、しっかりと導入に向けたテストをしていきたいと思います」

関係者によれば、2023シーズンに導入するとなればその確定期限は12月とのことで、JRPとしては今後10月の鈴鹿、11月のもてぎでのテストを経て、仕様を固めていくつもりのようだ。なお、テストが重ねられている燃料やタイヤについても、最終仕様は「検討中」(上野社長)であるとしている。
一方、参戦するエントラント側は、この新型空力パッケージ導入について、必ずしも諸手を挙げて賛成、というわけではないのが現状のようだ。主にネックとなっているのは、1台あたりおよそ1500万円とされる導入費用にある。