更新日: 2024.04.11 11:06
【2024年GT300をイチから学ぶ】スーパーカーにレクサス、BRZなど豊富な車種が争う混沌。新予選方式でますます予測困難に
岡山ラウンドにて幕を開ける2024年シーズンに向けては複数の変更点が確認されている。まずひとつめはレースフォーマットだ。スーパーGTでは300kmを基本に、これまで1000kmや500kmなどさまざまなスタイルのレースが展開されてきたが、2023年は300kmと450kmというふたつのスタイルが採られていた。2024年に向けては450kmレースが消滅。代わって350kmと3時間のフォーマットが新たに採用され、シリーズ初となる時間制レースが行われることとなった。この内、300km以外のレースでは第3ドライバーの登録が可能となる。今季の年間スケジュールは下記のとおりだ。
●スーパーGT 2024年シーズンスケジュール
Round | Date | Circuit | Format |
---|---|---|---|
第1戦 | 4月13~14日 | 岡山国際サーキット | 300km |
第2戦 | 5月3~4日 | 富士スピードウェイ | 3時間 |
第3戦 | 6月1~2日 | 鈴鹿サーキット | 3時間 |
第4戦 | 8月3~4日 | 富士スピードウェイ | 350km |
第5戦 | 8月31日~9月1日 | 鈴鹿サーキット | 350km |
第6戦 | 9月21~22日 | スポーツランドSUGO | 300km |
第7戦 | 10月19~20日 | オートポリス | 3時間 |
第8戦 | 11月2~3日 | モビリティリゾートもてぎ | 300km |
変更点のふたつめはタイヤセット数の減少だ。タイヤの持ち込みセット数は昨年から1セット少ない計4セット(16本/300kmレースの場合)となり、これと並行して予選ではQ1とQ2を同一セットで走らならければならない、というルールに変更された。さらに、決勝スタートも予選で使用したタイヤを使う必要がある。
その予選は従来のノックアウト方式から刷新され、Q1とQ2のタイム合算方式に改められた。GT300クラスの新しい予選フォーマットでは、前戦までのポイントランキングに基づいて振り分けられたA組とB組でそれぞれ予選Q1が行われたのち、各組上位8台を集めた“アッパー16”とそれ以外の“ロワー17”に分かれてQ2が行われることとなる。
両グループの間ではアッパー側の下位4台(暫定13~16番手)とロワー側上位4台(暫定17~20番手)のポジションが、それぞれの合算タイムに準じて入れ替えられる。しかし、雨天時や路面が濡れている状況でレースコントロールより「ウエット宣言」が出された場合は、Q1/Q2タイムの合算およびアッパー16とロワー17の一部入れ替えは行われない。
●予選Q2後の“アッパー16”と“ロワー17”の入れ替えイメージ
ポジション | レギュレーション | 運用例 |
---|---|---|
予選1番手~12番手 | アッパー16の上位12台 | アッパー16上位12台 |
予選13番手 | アッパー16の下位4台と ロワー17の上位4台 |
アッパー16の13番手 |
予選14番手 | アッパー16の14番手 | |
予選15番手 | ロワー17の1番手 | |
予選16番手 | アッパー16の15番手 | |
予選17番手 | ロワー17の2番手 | |
予選18番手 | ロワー17の3番手 | |
予選19番手 | アッパー16の16番手 | |
予選20番手 | ロワー17の4番手 | |
予選21番手以下 | ロワー17の5番手以下 | ロワー17の5番手以下 |
このほか新シーズンに向けては、昨季2023年は保留となっていたカーボンニュートラル・フューエル(CNF)を50%含んだ指定燃料『GTA R50』の使用義務付けや、リザーブドライバー制度の導入、競技での安全性向上を図る対策として追加のウエイトが搭載されることとなった。追加ウエイトは前述のBoP(性能調整)やサクセスウエイトとは別に重量が加わることとなる。コーナーリング速度抑制のために追加される重量は33~52kgで、GTAによって車種ごとに設定された。
■新造のフェアレディZ、新型フェラーリGT3が登場。車両炎上のGRスープラは復活
前年覇者、埼玉Green Brave(52号車Green Brave GR Supra GT)がタイトル防衛を目指すことになる2024年シーズンに、群雄割拠のGT300クラスに参戦するマシンは計27台。このうち新規参戦チームはPONOS RACING、HELM MOTORSPORTS、D’station Racingの3チームだ。藤井誠暢とWEC世界耐久選手権チャンピオンのマルコ・ソーレンセンが新型アストンマーティン・バンテージAMR GT3をドライブするD’station(777号車 D’station Vantage GT3)は、2020年以来のシリーズ復帰となる。
2020年に平木湧也と玲次の兄弟によって立ち上げられ、わずか2年でスーパー耐久シリーズのST-Xクラスでチャンピオンに輝いたHELM(62号車HELM MOTORSPORTS GT-R)は、チーム代表を兼務する平木湧也とGT500で2度タイトルを獲得した平手晃平のペアに、第3ドライバーの平木玲次を加えた体制でスーパーGTでの初年度を戦っていく。同チームは日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)のオフィシャルパートナーチームであることから、マシンはニッサンGT-RニスモGT3だ。
3つめの新規チームであるPONOS RACINGは、経験豊富なケイ・コッツォリーノとフェラーリGTワークス史上初の女性ドライバーであるリル・ワドゥを擁し、跳ね馬の最新GT3カー、45号車PONOS FERRARI 296を走らせる。D’Stationと同様に強力コンビと新型GT3マシンの組み合わせがもたらすパフォーマンスは大いに注目したいところ。
今季のルーキードライバーはともにWECと並行参戦となるソーレンセンとワドゥ、PACIFIC RACING TEAM(9号車PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG)の第3ドライバーに指名された藤原優汰、同じく第3ドライバー登録でTEAM UPGARAGE(18号車UPGARAGE NSX GT3)に加わったホンダ育成の三井優介、ベテラン荒聖治の相棒としてBMW Team Studie x CRS(7号車Studie BMW M4)に迎えられたニクラス・クルッテン、apr(30号車apr GR86 GT/31号車apr LC500h GT)からGT300初参戦を果たすFIA-F4チャンピオンの小林利徠斗と同2位の中村仁の計7名となっている。
このほか注目しておきたいのは、GAINERが投入する新型ニッサン・フェアレディZや、土屋武士監督が率いるHOPPY team TSUCHIYAのトヨタGRスープラなど。富田竜一郎と石川京侍がドライブする新型Z(11号車GAINER TANAX Z)はGTA-GT300規定のマシンだが、2度の公式テストには間に合わずぶっつけ本番で第1戦を迎えることとなる。
一方、“ホピ子”の愛称で知られるつちやエンジニアリング謹製のGRスープラ(25号車HOPPY Schatz GR Supra GT)は、2023年シーズン第4戦富士での車両火災から復活を果たした。菅波冬悟と松井孝允がステアリングを握る25号車GRスープラは富士の公式テストを走っており、一定の準備を整えた状態で岡山に向かう。その岡山国際サーキットを“ホーム”とするTeam LeMansは、片山義章とロベルト・メリ・ムンタンが乗り込むマシンをアウディR8 LMSからフェラーリ296 GT3(6号車UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)にスイッチ。開幕戦は心機一転してのホームラウンドとなる。
国産車と外車、メーカー製とガレージ生まれの手作りマシンが入り混じり、それを駆るドライバー陣では免許取り立ての18歳から世界選手権王者、還暦を超えた大ベテランまで、濃すぎる才能とチームが集うGT300クラス。混沌としたこのカテゴリーで今年なにが起き、誰が笑い誰が泣くのか、その最初の章を埋める開幕戦は今週末にやってくる。サーキットで巻き起こる予想不能なドラマをぜひ、その目で確かめてほしい。
スーパーGTの各レースは2024年シーズンもスポーツ専門チャンネルのJ SPORTSとインターネット経由でパソコンやスマートフォンなどで番組を楽しめるJ SPORTSオンデマンド、動画配信サイトのニコニコにて、予選と決勝の生中継/ライブ配信が行われる予定だ。
■2024年スーパーGT エントリーリスト(GT300クラス)
No | Team | Car | Driver | Tyre |
---|---|---|---|---|
2 | muta Racing INGING | muta Racing GR86 GT | 堤優威/平良響 | BS |
4 | GOODSMILE RACING & TeamUKYO | グッドスマイル 初音ミク AMG | 谷口信輝/片岡龍也 | YH |
5 | TEAM MACH | マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 | 藤波清斗/塩津佑介 | YH |
6 | Team LeMans | UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI | 片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン | YH |
7 | BMW M Team Studie x CRS | Studie BMW M4 | 荒聖治/二クラス・クルッテン | MI |
9 | PACIFIC RACING TEAM | PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG | 阪口良平/冨林勇佑 | YH |
11 | GAINER | GAINER TANAX Z | 富田竜一郎/石川京侍 | DL |
18 | TEAM UPGARAGE | UPGARAGE NSX GT3 | 小林崇志/小出峻 | YH |
20 | SHADE RACING | シェイドレーシング GR86 GT | 平中克幸/清水英志郎 | MI |
22 | R’Qs MOTOR SPORTS | アールキューズ AMG GT3 | 和田久/加納政樹 | YH |
25 | HOPPY team TSUCHIYA | HOPPY Schatz GR Supra GT | 菅波冬悟/松井孝允 | YH |
30 | apr | apr GR86 GT | 永井宏明/小林利徠斗 | YH |
31 | apr | apr LC500h GT | 小高一斗/中村仁 | BS |
45 | PONOS RACING | PONOS FERRARI 296 | ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥ | MI |
48 | NILZZ Racing | 脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-R | 井田太陽/柴田優作 | YH |
50 | Arnage Racing | ANEST IWATA Racing RC F GT3 | イゴール・オオムラ・フラガ/古谷悠河 | YH |
52 | 埼玉Green Brave | Green Brave GR Supra GT | 吉田広樹/野中誠太 | BS |
56 | KONDO RACING | リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R | 佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ | YH |
60 | LM corsa | Syntium LMcorsa GR Supra GT | 吉本大樹/河野駿佑 | DL |
61 | R&D SPORT | SUBARU BRZ R&D SPORT | 井口卓人/山内英輝 | DL |
62 | HELM MOTORSPORTS | HELM MOTORSPORTS GT-R | 平手晃平/平木湧也 | YH |
65 | K2 R&D LEON RACING | LEON PYRAMID AMG | 蒲生尚弥/篠原拓朗 | BS |
87 | JLOC | METALIVE S Lamborghini GT3 | 松浦孝亮/坂口夏月 | YH |
88 | JLOC | JLOC Lamborghini GT3 | 小暮卓史/元嶋佑弥 | YH |
96 | K-tunes Racing | K-tunes RC F GT3 | 新田守男/高木真一 | DL |
360 | TOMEI SPORTS | RUNUP RIVAUX GT-R | 大滝拓也/青木孝行 | YH |
777 | D’station Racing | D’station Vantage GT3 | 藤井誠暢/マルコ・ソーレンセン | DL |