更新日: 2018.08.03 17:23
“ピュアスポーツ”志向の新型スープラ、2020年のスーパーGT“復帰”に期待
そんな“ピュアスポーツカー”としての新型スープラには、もちろんモータースポーツへの参加やそのためのモディファイを強く意識した設計が行なわれている。
「レースカーの性能は、クーリングで決まります。新型スープラは、ミッションやデフをいかに冷やすかということまで考えています。たとえば、後付けのデフクーラーのスペースを設計段階から確保したり、ミッションケースには最初からドレーンボルトの穴を切ってある」という。
この新型スープラがどのカテゴリーに参戦してくるかが気になるところだが「設計段階から後付けデフクーラーのスペースを確保している」などの言葉をヒントと捉えるならば、比較的改造範囲が狭くベース車両の基本レイアウトがパフォーマンスに影響するカテゴリー……たとえばGT3やGT4のようなカスタマーレーシングへの参入はほぼ間違いなさそうだ。
一方、ファン目線に立ったエンターテイメント性の高い“大幅な改造が許されるカテゴリー”としては、どのレースに出てくるのか?
「すでに、各国からうちの国のレースに出てほしいとのオファーがどんどん届いています。GT3とかGT4に関する話もありますが、レギュレーションがいろいろ動いているので今は動向を見極めているところです。そもそもお金がかかりすぎるという話もあります。今年のル・マン24時間レースで勝ったことを受けて、フランストヨタからはGT車両(LMGTE)で参戦してほしいという要望も来ています。当然、日本でもスーパーGTに出たいという話も出ると思います」
■10年越しのストーリー完結!?
新型スープラを語るうえでは、ニュルブルクリンク24時間レースとの関わりを避けて通るわけにはいかない。
「ニュルはどのカテゴリーで走るかですね。量産車ではすでにオールドコースを走っていて、正直、タイムは無茶苦茶速いですよ。正式にタイムアタックはしていませんが、リミッターを解除しないで普通に走って7分台は楽勝なんです。完全にニュートラルステアで走れるクルマができました。プロのような本当にうまい人なら良いですが、我々のようなドライバーはオーバースピードでコーナーに入ったりすることもある。そんなドライバーがニュルで走っても『怖い』という感じがしない」と多田CEは自負する。
新型スープラは、トヨタのGRカンパニーによって開発されているクルマだ。GRカンパニーは、市販車両の開発を行なうと同時に、世界選手権からグラスルーツカテゴリーのレース活動を同時にかつ継続的に行なうことが使命とされている。つまり、新型スープラでのレース参戦が、すでに発表されているNASCARエクスフィニティシリーズだけにとどまるはずはない。
現状では「カテゴリーについては決まり次第お伝えします」と多田CEは多くを語らないが、日本のファンとしてはぜひともGT500での復活を願いたい。auto sport No.1486の巻頭にもあるように、スーパーGTでは2020年から本格的に『クラス1規定』が始動するからだ。
このタイミングで新型スープラが投入されれば、古くからのファンが復活に興奮するだけにとどまらず、より多くの人が「欧州プレミアムブランドとの戦い」という新たな構図にも胸を高鳴らせることができる。そして、それはかつて豊田章男社長が味わった“80スープラの屈辱”を新型スープラで晴らすというストーリーの完結にもうってつけと言える。
「GT500にスープラ復活」という計画は、すでに水面下で進んでいても不思議ではない。いや、表にこそ出てきていないものの、そのプロジェクトは着々と進行していると考えたほうがむしろ自然だ。世間が東京オリンピックに沸く2020年、あの強いスープラが帰ってくる。