更新日: 2019.08.21 20:35
ZENT CERUMO LC500にみるGTのシビアさ。ナット不良でなければ“対策”は困難/スーパーGT第5戦富士トピックス
ドライバーふたりを“外部”から招いて新たなスタートを切った今季のCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは、当初から第5戦富士での表彰台獲得を狙っていた。テストの機会も少ないなか2度目の富士となること、そしてニッサンGT-Rが得意とするコースであることが、その理由だ。
予選は赤旗の影響もあり「悔しい」(平手晃平)2番手となったが、前戦タイも予選3番手と「ベースとなるセットができてきた」(田中利和監督)うえに、ドライバーふたりの順応もレースごとに進んでいる。
レースではフレデリック・マコヴィッキの接触やブレーキトラブルによる修復作業があり結果は残らなかった。だが、一時はトップに立ち、ピックアップに苦しむ23号車MOTUL AUTECH GT-Rとは対照的にスティント終盤まで快調なペースを維持するなど、“最大のベンチマーク”23号車(今回のウエイト差は17kg)を上回っている部分もある。
田中監督は今季の目標を「(ランキング)トップ6」と語るが、最大ウエイトとなる次戦では、すべてがかみ合えば優勝も狙えるはずだ。
■埼玉トヨペットGB マークX MC、悔しい2位。それでもこぼれた笑顔の理由
レースは結果がすべてだ。どんなに内容が良くとも、運に左右されようとも、シリーズポイントはリザルトに応じてしか得られない。しかし、時にリザルトだけでは見えてこない部分がある。埼玉トヨペットGB マークX MC(52号車)の第5戦富士の週末は、まさにそれだった。
まずは予選。Q2で吉田広樹の自身初ポールポジション(PP)獲得に沸いた裏側で、脇阪薫一はQ2進出ギリギリの16番手だった。リザルトだけを見れば、吉田の速さが際立つ。
実際、吉田は速い。だが、Q1の薫一にはメーター表示がすべて消え、無線も使えない電気系のトラブルが発生していた。ギヤポジションも分からず、シフトタイミングのランプも点かず、薫一はエンジン音を頼りにシフトチェンジしていた。その状況でのQ1突破は称えられる結果だろう。それがなければ、吉田のポールポジションも幻となっていたのだから。
決勝はポールスタートからの2位。参戦3年目のチームにとってベストリザルトだが、「もちろん勝ちたかったし、そのチャンスはあったと思うので悔しい」という吉田に、「僕たちは勝つか負けるかでやっている。2位も3位も4位も一緒なんですよ」と薫一が付け加える。たしかに、セーフティカーという運の要素が働かなければ、52号車が勝っていたレースだった。
それでも、「久々に満足はしています。勝ってないのにこれだけ僕がニコニコしているのは珍しいでしょ(笑)」と薫一。それに吉田が「2位でも充分な収穫があったから」と呼応する。
ドライバー交代を伴う4回のピットが義務付けられた富士500マイルレースで、52号車は2回目のピット時のみしかタイヤを交換していない。つまり、タイヤ無交換で後半の3スティントを走り切ったのだ。この戦略は賭けではなく「実戦テスト」だという。
GT500を主戦場とするブリヂストンタイヤを、今季から使用している52号車は、まだマザーシャシー(MC)に合わせ込んだタイヤ開発が進んでいない。そして、翌週末に行なわれたSUGOテストで、MCに合わせたタイヤを初めてテストした。
2日間の総合タイムは3番手。ここに“試しのトリプルスティント”のデータが今後のタイヤ開発に活かされる。そこで感じた期待に、自然と笑顔がこぼれたのだろう。52号車の初優勝は、近い未来に起こり得る。