戦力拡大のダンロップ「レベルが上がった」新構造タイヤと、FCY直後に抱えた不安【第2戦富士GT300分析】
今季、ゲイナー内では10号車GAINER TANAX with IMPUL GT-Rもヨコハマからダンロップへとタイヤを変更。開幕戦までは11号車とややギャップも見られたが、第2戦では予選で11号車に続く7番手、決勝ではピットイン時にFCYが導入されたこともあって上位に進出した。
ゲイナーの2台は90周目にフルコースイエロー(FCY)が導入された時点で、10号車が6番手、11号車が8番手を走行していた。
FCY解除後、11号車はJLOC ランボルギーニ GT3をパスするが、101周目に突如スローダウン。左リヤタイヤのバーストによるもので、「完全には分かりませんが、FCYで内圧がかなり下がって、そこからプッシュした結果なのかもしれません。ただ、完全摩耗っぽくもあるので……」(福田洋介エンジニア)と決勝直後の段階では原因究明には至っていない様子だった。
深刻なのはまったく同じ症状が2周後、ファイナルラップ走行中の10号車にも出てしまったことだ。こちらもFCY後に順位を上げ、フィニッシュを目指していたところだった。チェッカー直前に103周目へと突入していた石川京侍は、左リヤタイヤのバースト後に長い時間をかけてマシンをホームストレートまで運んだものの、リザルト上では102周完了時までが計時されている。
「やはり(昨年までの規則区分で言うBRZ、GRスープラの)JAF勢に比べると車重が重いので、どうしてもタイヤへの負担が違ってきてしまいます。今回ワン・ツーの2台は、次の鈴鹿では(サクセスウエイトを)積みますけど、それでもうちより軽いので……」と福田エンジニアは苦境を語るが、一方でまだサクセスウエイトは嵩んでいないため、鈴鹿以降にも勝てるチャンスは残されている。今後に向けては、トラブルの原因究明と対策が必須となってくるが、パフォーマンスを犠牲にすることなくそれを達成できるかがカギとなる。
■ブリヂストンの底力と王者ヨコハマの苦境
第2戦では最初のピットでタイヤ無交換作戦を敢行し、安定したペースで終盤までレースをリードした埼玉トヨペットGB GR Supra GTが突然の駆動系トラブルによって戦列を去ったことにより、ダンロップ勢のワン・ツーは達成された。
ブリヂストンのGT300向けタイヤは昨年までと基本的には同じ仕様であり、とくにこのオフに開発を進めてきたわけではないという。それでも第2戦ではGRスープラが“実質優勝”に近い勢いを見せ、ARTA NSX GT3は表彰台の一角に立ち、45kgのサクセスウエイトを積んだLEON PYRAMID AMGも4位に食い込むなど、タイヤとそのパフォーマンスを熟知したチームの底力は計り知れない。
一方、昨年覇者のヨコハマ勢では、JLOC ランボルギーニ GT3やリアライズ日産自動車大学校 GT-RがFCY直前のピットインにも助けられシングルフィニッシュを果たしているが、僅差の激戦となった予選Q1・A組で脱落を喫したリアライズの藤波清斗が「セッティングが悪いわけでもなく、フィーリングも良く、(Q1は)通ったかなと思ったら、周りがもっと速かった」と語ったように、開幕戦優勝のサクセスウエイトも効いてか、富士では全体的なスピードがライバル勢に対し不足していた印象だ。
鈴鹿以降もダンロップ対ブリヂストンの図式が続くのか、あるいはヨコハマ勢も上位に食い込んでくる状況となるのか。さまざまなタイプのマシンが入り乱れるGT300では、タイヤとマシンのマッチングが繊細な部分もある。気温の上昇とともに、タイヤメーカー間の勢力争いも熾烈になってきそうだ。