更新日: 2023.04.11 23:56
【2023年スーパーGTをゼロから学ぶ】ホンダNSX、最終年でのタイトル奪還なるか。新燃料導入による勢力図の変化にも注目
GT300クラス
続いてはGT300クラスを見ていこう。GT300クラスには、GT500クラス以上に国内外から多くの車種が参戦しているが、そのマシン達はスーパーGTのテクニカルレギュレーションに定められた3つの規定に分かれて開発がなされている。
その規定は、市販車両をベースにして各チームが独自に開発することができるGTA GT300、国内外の自動車メーカーが製作したFIA-GT3と、GTアソシエイションが供給する共通モノコック、エンジンなどをベースにして各チームが開発することできるGT300MC(マザーシャシー)の3つとなる。
これらの規定によって製作された多種多様なマシン達は、車両最低重量やエンジンへの吸入空気量を制限するエアリストリクター、もしくはターボの過給圧のいずれかを調節することによって車種間の性能調整(BoP)を行うことで、限りなく近い性能領域で競い合うことが可能となっている。
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■2023年GT300クラス注目の新型車両、新規参戦チーム
次に、GT300クラスのエントリーリストを見てみよう。
■2023年スーパーGT GT300クラスドライバーリスト
No | Team | Car | Driver | Tyre |
---|---|---|---|---|
2 | muta Racing INGING | muta Racing GR86 GT | 堤優威/平良響 | BS |
4 | GOODSMILE RACING & TeamUKYO | グッドスマイル 初音ミク AMG | 谷口信輝/片岡龍也 | YH |
5 | TEAM MACH | マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 | 冨林勇佑/松井孝允 | YH |
6 | Team LeMans | DOBOT Audi R8 LMS | 片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン | YH |
7 | BMW Team Studie x CRS | Studie BMW M4 | 荒聖治/ブルーノ・スペングラー | MI |
9 | PACIFIC RACING TEAM | PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG | 阪口良平/リアン・ジャトン | YH |
10 | GAINER | PONOS GAINER GT-R | 安田裕信/大草りき | DL |
11 | GAINER | GAINER TANAX GT-R | 富田竜一郎/石川京侍 | DL |
18 | TEAM UPGARAGE | UPGARAGE NSX GT3 | 小林崇志/小出峻 | YH |
20 | SHADE RACING | シェイドレーシング GR86 GT | 平中克幸/清水英志郎 | DL |
22 | R’Qs MOTOR SPORTS | アールキューズ AMG GT3 | 和田久/城内政樹 | YH |
25 | HOPPY team TSUCHIYA | HOPPY Schatz GR Supra GT | 菅波冬悟/野中誠太 | YH |
27 | Yogibo Racing | Yogibo NSX GT3 | 岩澤優吾/伊東黎明 | YH |
30 | apr | apr GR86 GT | 織戸学/上村優太 | YH |
31 | apr | apr LC500h GT | 嵯峨宏紀/小高一斗 | BS |
48 | NILZZ Racing | 植毛ケーズフロンティア GT-R | 井田太陽/田中優暉 | YH |
50 | ANEST IWATA Racing with Arnage | ANEST IWATA Racing RC F GT3 | イゴール・オオムラ・フラガ/古谷悠河 | YH |
52 | 埼玉トヨペット Green Brave | 埼玉トヨペットGB GR Supra GT | 吉田広樹/川合孝汰 | BS |
56 | KONDO RACING | リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平 | YH |
60 | LM corsa | Syntium LMcorsa GR Supra GT | 吉本大樹/河野駿佑 | DL |
61 | R&D SPORT | SUBARU BRZ R&D SPORT | 井口卓人/山内英輝 | DL |
65 | K2 R&D LEON RACING | LEON PYRAMID AMG | 蒲生尚弥/篠原拓朗 | BS |
87 | JLOC | Bamboo Airways ランボルギーニ GT3 | 松浦孝亮/坂口夏月 | YH |
88 | JLOC | JLOC ランボルギーニ GT3 | 小暮卓史/元嶋佑弥 | YH |
96 | K-tunes Racing | K-tunes RC F GT3 | 新田守男/高木真一 | DL |
244 | Max Racing | HACHI-ICHI GR Supra GT | 佐藤公哉/三宅淳詞 | YH |
360 | TOMEI SPORTS | RUNUP RIVAUX GT-R | 青木孝之/田中篤 | YH |
2023年シーズンは計27台のエントリーとなるGT300クラス。今季は新型車両が1台、新たにフルシーズン参戦するルーキーは10名、そして新たに参戦するチームは2チームとなっている。
なかでも注目なのは、新型車両を投入するaprだ。レーシングチームであるだけでなく、レーシングコンストラクターの顔も併せ持つ同チームが新たに送り出すのは、GTA GT300規定によって新たに開発したLC500h GTだ。
ベース車両はレクサスブランドのハイブリッドカー、LC500h(GWZ100)。エンジンには昨シーズンの同チームのマシンであるプリウス、GR86と同様の5.4リッターV8自然吸気『2UR-G』を搭載し、ハイブリッドシステムは2022年仕様のプリウスと同様のものとなる。
2022年シーズン終了後にはシェイクダウンも無事に終え、開幕前テストでの走行も順調に重ねている様子。aprの作り出した新型マシンが開幕戦からどこまで上位に食い込むことができるのか、期待しないではいられない。
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そして、新規参戦となるチームは、2021年にGT300クラス参戦し2022年シーズンはGTワールドチャレンジ・アジアに挑戦していたYogibo Racingと、近年スポンサードを通じてスーパーGTに参画していたアネスト岩田が立ち上げたANEST IWATA Racing with Arnageだ。
2チームとも、ドライバーにはルーキーを起用しているということも、注目の要素と言えるだろう。Yogibo Racingは、2022年までFIA-F4で戦っていた岩澤優吾と伊東黎明のふたりを起用している。
一方のANEST IWATA Racing with Arnageでは、イゴール・オオムラ・フラガと古谷悠河がエントリーする。さらに、第3ドライバーには2022年のフォーミュラ・リージョナル王者である小山美姫の起用を発表しており、450kmレースのいずれかに参戦するはずだ。
そして海外からは、ふたりのドライバーが初のスーパーGT参戦を果たすこととなる。なかでも注目なのは、実力派として名高いブルーノ・スペングラー(Studie BMW M4)だ。
スペングラーは、2012年にDTMドイツ・ツーリングカー選手権でドライバーズチャンピオンを獲得し、BMWワークスドライバーとして世界中のレースを戦い抜いてきたドライバー。3月11日〜12日に行われた岡山の公式テストでは、初日からパートナーの荒聖治(Studie BMW M4)と遜色ないタイムを出すなど、準備はバッチリの様子だ。
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■新導入の燃料、持ち込みタイヤセット数の削減の影響
2023年シーズンよりスーパーGTは、シリーズ全体のカーボンニュートラル化を推進するために、持ち込みタイヤセット数の削減と、CNF(カーボンニュートラルフーエル)の導入を行う。なお、CNFの導入はGT500クラスが開幕戦から、GT300クラスへのは第3戦鈴鹿からとなる。
この動きは、2022年11月6日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された最終戦の際に、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表が発表した、2030年にシリーズ全体のCO2排出量50パーセント削減を目指す環境対応ロードマップ『スーパーGTグリーンプロジェクト2030』に準じたものだ。2024年以降も、持ち込みタイヤのセット数をさらに削減するなどのカーボンニュートラルへ向けた継続的な活動が予定されている。
この変更によって、2023年シーズンにおける持ち込みタイヤセット数は300kmレースの場合は5セット、450kmレースの場合は6セットとなり、2022年シーズンに比べて1セットずつ少なくなる。
スーパーGTは世界でも数少ないタイヤ開発が可能なレースシリーズであるため、持ち込めるタイヤの数が減るとなれば、それに合わせたサステナブルなタイヤの改良は2023年シーズンの重要な要素となるだろう。
また、2022年シーズンにGT500クラスでミシュランのウエットタイヤが好成績をおさめて以来、両クラスともウエットタイヤの開発もドライタイヤと同じレベルで重要になりつつある。2023年シーズンはドライとウエットの両レースにおいて、各タイヤメーカーがどのようなタイヤを開発してくるのかという点にも注目したいところだ。
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また、もうひとつの変更点であるCNFの導入については、GT300クラスはCNF燃料に対するエンジンの適合に向けた対応に時間を要しているとのことで、第1戦と第2戦での導入は見送られたものの、GT500クラスでは開幕戦から使用されることになっている。
しかし、実際にGT300クラスへの導入が延期されたことにも考えられるように、CNFへのエンジンの適応は一筋縄ではいかないというのが現状のようだ。
現在のGT500クラスの規定では、年間を通して使用できるエンジンは2基までと決められている。そして、一度投入したエンジンについては、本体に関する開発ができないため、特に空力に関する開発が凍結されている2023年シーズンは、シーズン中のエンジンの開発競争にも注目していく必要がありそうだ。
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2023年シーズンは450kmのレースが増えたことで新たな戦い方が要求されるなか、シリーズ全体としてはカーボンニュートラルへ向かう動きを見せるなど、新時代へ向けて進み出したスーパーGT。
両クラスの戦いは近年僅差での混戦を極めているが、その戦いはさらに激しくなっていきそうだ。まずは開幕戦でどのチームがシリーズを引っ張っていくことになるのか、ぜひ注目してほしい。
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