KTMS 2024スーパー耐久第7戦富士 レースレポート
KTMS
ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE
第7戦 S耐ファイナル 富士
2024年11月16日(土)〜17日(日) 富士スピードウェイ(静岡県)
入場者数:11月16日:11,800人 11月17日:20,400人
荒れた展開を耐えて6位に
2024年ST-2クラスチャンピオンを獲得!
■PRACTICE スポーツ走行/STMO専有走行
11月13日(水)〜15日(金)
天候:曇り/雨 路面:ドライ〜ウエット
第6戦岡山ではトップ争いの末に勝利を譲ることにはなったものの、トラブルを抱えながら2位となりポイントリーダーを守り切ったKTMS GR YARIS。王者決定の大事な一戦となる第7戦富士は、小林利徠斗と中村仁がマカオGP で不在のため、スーパー耐久参戦以来からチームを支え、今季TGR GR86/BRZ Cup をともに戦う平良響を招聘した。
一條拳吾、奥本隼士、平良の3名で乗り込んだ最終戦は、11月14日(木)のスポーツ走行から走り始めた。朝はドライだったものの、午後から雨が降り出しウエットとなったが、終始スリックタイヤで走行。ドライコンディションにおけるセットアップを煮詰めることに成功した。
11月15日(金)の専有走行でも再度セットアップの確認をするべく準備を進めていたが、富士スピードウェイは前夜から午後にかけて一面霧に覆われる天候となってしまう。
そのため午前の専有走行1回目は、水飛沫が上がるウエットコンディションとなり、課題を変更。今大会からブリヂストンによってウエットタイヤの新スペックタイヤが持ち込まれたことから、そのテストに重点を置いた。そのなかでも1分59秒183をマークし、クラストップにつけた。ただ、午後の専有走行2回目は濃霧による視界不良でキャンセルとなってしまい、ロングランとセットアップの確認作業ができず、やや課題を残したまま予選日へと臨むことになった。
■QUALIFY 公式予選
11月16日(土)
天候:曇り 路面:ドライ
予選日の11月16日(土)はようやくドライでの走行が叶い、朝のウォームアップではセットアップを確認。変更も要したが、メカニックの迅速な対応もあったことで着実に予選に向けて準備を整えることができた。
午後1時20分からはAドライバー予選がスタートしたが、レースウイークで初のニュータイヤを導入してアタックした一條は1分51秒443を記録し、4番手につける。
続くBドライバー予選では、雨がぱらつく天候に。「ドキドキしていた」という奥本だが、1分51秒494とまとめて合算で4番手グリッドを獲得した。Cドライバー予選に出走した平良はタイムこそ1分53秒400となったが、ロングランに徹して決勝に向けてのペースを確認。チャンピオン獲得に向けて不安要素を解決し、決勝は万全な体制で臨めるよう、経験を活かしたトライを行った。
■RACE 決勝レース
11月17日(日)
天候:晴れ 路面:ドライ
決勝日となった11月17日(日)は朝から陽光が注ぎ、レースウイークいちばんの好天に恵まれる絶好のレース日和となった。最高気温は23度と少し汗ばむ晴天の下、4時間の決勝は午後0時30分にスタートを迎えた。
スタートを担当した一條は、まず4周目完了時点でAドライバーハンディキャップを早々に消化。ふたたびコースへと戻るが、スタートから20分過ぎ、ST-3車両が激しいクラッシュを喫し、フルコースイエロー(FCY)が導入され、その後セーフティカーランへと移行する展開となる。その好機を逃すまいとKTMS GR YARISは先手を切ってピットに入り、平良にチェンジ。ベストタイミングで送り出したことが功を奏する展開となり、後続車両にアドバンテージを築くことに成功した。
良い流れのままレースを運べるかと思われたが、クラッシュの影響でガードレールの補修が必要となり、セーフティカーランが続いた後、開始40分ほどで赤旗中断となってしまう。これで築き上げたリードが消失してしまった。
レースは1時間8分の中断を経てリスタートを迎えるが、その後もFCYが二度も入り、一時はラップダウンに追い込まれる苦境に立たされてしまう。ただ、チームはそんな状況にも迅速に対応し、ドライブしていた平良もその気持ちに応えるべく安定したペースを刻み、ポジションを守って奥本に交代した。
ただ最後のスティントを務める奥本がコースに戻り、巻き返しを図ろうとしていたところで、今度はST-Z車両が激しくクラッシュ。再度ガードレール補修が必要となり、ふたたび赤旗中断となった。ここでもまた好機に恵まれず、この時点ではチャンピオン獲得に厳しい順位となっていたため、チームはただ再開を願うばかりだった。もちろんその状況を知る奥本はリスタート時刻に向けて再集中。午後4時に残り30分でレースが再開されると、KTMS全員の思いを背負い、奥本がふたたびコクピットに戻った。
王者獲得に刻々と近づくなかでも焦りは禁物。奥本はプレッシャーに耐えながらも無事にチェッカーまでKTMS GR YARISを運んだ。
夕闇がサーキットを覆うなか、奥本は52周を走破し、KTMS GR YARISを6位でチェッカーに運んだ。この結果、ランキング2位の#13 GR YARISより下位となったが、シーズンでは3.5ポイント差で上回り、KTMSにとって2年ぶりのシリーズタイトルを決めた。
「チャンピオンを獲ることがレース活動のなかでも大きな目標」と語っていた奥本は、クルマから降りるとプレッシャーから解放されたかのように、チーム全員で作り上げ、このレースでも最後まで戦い抜いたKTMS GR YARISを労った。
今季はシーズンを通して大きなトラブル、ミスなどもなくチームワークの良さを活かして一丸となって戦い抜いたKTMS。
この歓喜のチャンピオン獲得を糧に、チームはさらに一致団結し、連覇に向けて新たなシーズンへ挑むこととなる。
■DRIVERS & ENGINEER VOICE ドライバー&エンジニアコメント
一條 拳吾 KENGO ICHIJO
今回僕たちは戦略やペースに関して、条件が悪いところでしか走れていなくて、もっとペースが上げれられるようなタイミングで毎回FCYが出てしまったりと、まともにレースをさせてもらえなかった感は否めません。二度の赤旗がかなり不利な展開で窮地に追い込まれましたが、最後まで取りこぼさなかったのはチーム力ですね。今年は特に目立ったトラブルが出ることなく、みんな大きなミスをすることなくやりきれました。細かい積み重ねがこの結果を引き寄せたと思います。
奥本 隼士 SHUNJI OKUMOTO
これほど逆境があるのかと、本当にどうなるか分からない不安な気持ちで走っていたのが正直なところです。小林選手や中村選手の気持ちも背負い、助っ人の平良選手やKTMSの皆さんの思いがこもったクルマで、絶対無事にチェッカーまで運ぶ気持ちを切らさずに走れたことが嬉しいです。今年は2年目の僕がチームを引っ張らなければと思っていましたし、だからこそ絶対にチャンピオンを獲りたかったので本当に良かったです。この先もこの経験をレースで活かしていきたいです。
平良 響 HIBIKI TAIRA
ライバルたちのペースが速く勝てない状況でしたが、1回目のピットインのタイミングが完璧でした。その後は赤旗が出て不利な状況になってしまいましたが、すぐにチーム全体が動いたので、そこはチーム力だと思います。僕は初めて乗るクルマでしたが、ひさしぶりにこのチームで乗り、2年前のチャンピオンを獲ったときと比べても新鮮味溢れるコメントができたと思います。逆境の展開でしたが、最終戦はみんなで頑張った結果、6位でチャンピオンを獲れたのかなと思います。
上田 昌宏 MASAHIRO UEDA 神戸トヨペットエンジニア
予選は思っていたよりタイムが伸びず、少しセットアップが煮詰められていなかったと感じています。ただCドライバー予選でロングランの燃費データも取れて、レースに反映できたので良かったです。レースは1回目のセーフティカーでハンディ分を巻き返せましたが、以降は不運続きでした。チャンピオンは獲れましたが、ペースも思っていたよりも伸びず、もう少しセットを煮詰める時間と各ドライバーの特性を理解して、タイヤの選択など取り組んでいかなければなりませんね。