更新日: 2019.01.18 19:56
MotoGP:ヤマハ開発部部長が明かす苦闘のシーズン。転機はタイGP/スペシャルインタビュー
2018年シーズン序盤、第1戦カタールGPではロッシが、第3戦アメリカズGPではビニャーレスが表彰台に立った。さらに第5戦から第9戦までは、ロッシとビニャーレスのいずれか、または両ライダーが連続して表彰台の一角を担った。だが、ライバルに脅威を与えるほどの力強さはなかった。シーズン中盤から終盤にかけて、ロッシは9戦連続で表彰台を逃している。
ロッシは極めて繊細なセンサーの持ち主で、マシンの状況を的確に判断できる。その反面、マシンのセットアップが自分好みに決まらないと、成績に悪影響が及びやすい。
ただし、9回も世界タイトルを獲ったライダーだ。王座に就くために、安定してポイントを重ねることがいかに重要かを熟知している。その彼をして第10戦以降は表彰台に立てなかったことが、2018年型YZR-M1のシビアさを浮き彫りにする。
ビニャーレスは、もう少し大らかだ。多少マシンが好みに合わなくても、23歳という若さならではの勢いもあって、自分でどうにかしてしまう。そして若さゆえに、心の動きが直接ライディングを左右する面もある。
ヤマハは第15戦タイGPで、YZR-M1にそれまでとは方向性の異なる仕様変更を施した。これが功を奏し、予選はロッシ2番手、ビニャーレス4番手。決勝はロッシ4位、ビニャーレスは3位表彰台と、そろって好成績を得た。だが、続く第16戦日本GPのビニャーレスは、同じ仕様にも関わらず予選、決勝とも7位に沈む。
落ち込み、悩むビニャーレスに、辻氏は「セッティングを変えずに、(自信を持って)ひたすら走ってほしい」と声をかけた。その効果もあってか、ビニャーレスは第17戦オーストラリアGPでは独走優勝を果たすのだ。
「ロッシとビニャーレス、キャラクターの異なるライダーを擁することは、非常に有益です。我々は、ふたりのどちらにも99%のマシンを提供する義務があると考えているからです」と辻氏。そうやって双方のリクエストを満たすマシンを造り込むことで、結果的にオールマイティな強いマシンに仕上げていく、という考え方だ。
2019年型の仕様は、現時点では明確には決まっていない。「さまざまなトライをする」と辻氏は言うが、そのねらいは「より高精度な99%」だ。
「残り1%、勝つか負けるかという最後の1%は、ライダーの頑張りなんですけどね」と辻氏は笑った。マシンを徹底的に造り込む一方で、あと1%のひと押しをしてもらうべくライダーを盛り上げる。2019年シーズンのヤマハが試されるのは、チームとしての総合力である。