2万回転リッター250馬力を目指した長円ピストン4スト500ccV4の『NR500』エンジン4世代の進化
初代4気筒の0Xが抱えたさまざまな問題の中でも一番重大だったのは、レース距離を走り切れる耐久性さえなかったことだった。そこで2作目となる1Xでは、耐久性・信頼性の向上が命題とされた。
そのための変更点として最も目立つものは、カムギヤトレインの出力取り出し部位をクランクシャフトのセンターに変更したこと。併せて、0Xではリダクションギアに内蔵させていたカムダンパーは、起振源であるカムシャフトの端部に設定場所を移しつつ容量を大幅に増やし、0Xの最大の泣き所だったカムダンパーの問題を根絶させた。
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Vアングルは100度のままだが、バルブアングルはNR1実戦車に搭載された0Xの65度から一気に40度へと狭められた。燃焼室がコンパクトになったことなどから、レース投入時の0Xでは100PSであった最高出力が1Xでは120PSを超えるレベルにまで向上。ただし、耐久性向上設計の影響でエンジン重量も0Xより7kg増えて64.5kgとなり、ライバルの2ストローク・4気筒に対して15kg以上も重いことになっていた。

■2X_NR3[1981]
Vアングルを90度に変更。当初からの目標最高出力130PSを達成
3作目の4気筒である2XにおいてNR500エンジンはVアングルが90度のV4となり、クランクシャフトの一次振動ゼロが実現された。エンジンの吸気管長の短縮やキャブレターユニットの小型化などがあって実現したVアングルの縮小だった。
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先述の吸気管長の短縮や吸気ポートのストレート化により吸気の流速を上げ、バルブリフトも増大。1Xではφ28mmまでだったキャブレターのボア径はこの2Xではφ30mmに拡大された。
1Xで40度にまで狭められていたバルブアングルもさらに狭角化されて37度となり、燃焼効率がさらに向上。また、エンジンオイルにエアが噛んだ状態の方がフリクションが低くパワーが上がることがベンチテストで確認されたことを受け、潤滑方式は従来のウェットサンプからセミドライサンプに変更された。
こうした各種改良の結果、最高出力はNR500の当初からの目標性能であった130PSに到達。この2Xを搭載した3代目NR500(NR3)によって1981年鈴鹿200km優勝などの戦果が挙げられた。
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