贅を尽くした“S”の世界。走りも装備も価格も最高峰クラス/メルセデス・ベンツEQS SUV試乗
車重は2900kg。メルセデス・ベンツ『B180』の車重が1440kgなので、ほぼ2台分の重さということになる。そう考えると、いや、別に考えなくてもいいのだが、『EQS 450 4MATIC SUV』は重たそうな素振りは一切見せず、ドライバーのアクセル操作に応じて軽快に反応する。これこそ電気で動くモーターの威力で、反応がいい。急勾配での加速など、さまざまなシーンで走りを確かめたが、動力性能に関しては頼もしさを感じるばかりで、ストレスを感じるシーンはなかった。メルセデス・ベンツのラインアップの中で最上級を示す“S”を車名に含むだけあり、走行中はずっと、圧倒的に静かである。
回生ブレーキによる減速度はステアリング裏のパドルを引くことで3段階に強弱を切り替えることが可能。パドル操作でD Autoを選択すると状況に応じて回生ブレーキ力を最適に調節する。前方が開けている場合は、アクセルペダルをオフにしても大きな減速度は発生させない。
いっぽう、先行車を検知すると、必要に応じて自動的に回生ブレーキを介入させ、先行車との車間距離を維持する。先行車が停止すれば、自車もシステムの判断で止まる。実質的に追従走行の機能をオンにしたようなものだ。
フロントとリヤに搭載するモーターの駆動力は走行状況に応じて連続可変で緻密に制御しており、ドライバーを含め、乗員の知らないところで前後の配分を最適化。エネルギー効率を高めたり(航続距離を少しでも延ばすため)、旋回性を高めたり、トラクションを高めたりしている。運転していて「気持ちいいなぁ」と感じたとしたら、そのうちの一定の割合は緻密な前後のトルク配分制御のおかげだ。
前後モーターのトルク配分制御は恩恵を体感するのは難しいが、後輪を最大10度逆相に切るリア・アクスルステアリングは恩恵を体感しやすい。『EQS 450 4MATIC SUV』の最小回転半径は、ホイールベースが3210mmもあるのに5.1mでしかない。『EQS』の内燃エンジン版ともいえる3列目シートを備えた『GLS』(ホイールベース3135mm)の最小回転半径が5.8mだと記せば、取り回しの良さが実感できるだろうか。ちなみに、車重で引き合いに出したB180(ホイールベース2730mm)の最小回転半径は5.0mだ。
走行中にステアリングを切り込んだ際は車速に応じてリア・アクスルステアリングを逆相(低中速)または同相(高速)に制御しているはずで、それが、巨体なのに意のままに動いてドライバーに快感を与える陰の功労者として機能している。寸法や重量の数字が示すように、『EQS 450 4MATIC SUV』は大きく重たいクルマには違いないが、そうは感じさせないところが技術の力だ。