今宮純の金曜インプレッション:レッドブル対決は先輩リカルドやや優勢、アロンソQ3の鍵は「セクター3」
ニコ・ロズベルグとメルセデスにとって、特別なレースのはずだ。歴史に刻まれた記録に追いつき、塗りかえたい──そんな空気感ただよう第5戦スペインGP、ヨーロッパラウンド開幕。
ロズベルグには開幕5連勝、年またぎの8連勝がかかっている。いまの彼なら挑戦できると思う。決して運だけではない実力、速さと強さを前戦ロシアGP「完全試合=グランドスラム」で証明したばかりだ。ミハエル・シューマッハーの2004年7連勝に並んだことを、ジャーナリストみたいにF1史にくわしい彼が意識しないわけはない。父ケケさんのキャリアも、すべてニコは覚えている。
メルセデス・チームには11連勝がかかっている。1988年を席巻したマクラーレン・ホンダに並ぶことができるのか。史実に残る1952〜53年のフェラーリ“14連勝”という記録はグランプリの時代性からすれば「明治と平成くらい」の違いが横たわる。しかし、いまメルセデスは傑出した大記録に挑む資格を握っている。ちなみに、ここで勝てば区切りのメルセデス50勝、たぶん何かキャンペーンを準備しているはずだ。
ロズベルグが金曜フリー走行2回目でトップ。1分23秒922は昨年ポールタイムを上回るが、冬の合同テストより1秒以上も遅い。フェラーリのキミ・ライコネンは3月3日に1分22秒765をウルトラソフトで叩き出し、「オフのポールポジション」を決めた。2番手もフェラーリのセバスチャン・ベッテル、3番手にソフトで1分23秒022のロズベルグが続いた。そして、ルイス・ハミルトンは10番手。
開幕からコース特性は様々でも、今年ハミルトンは自己満足セットアップを仕上げるまでに時間がかかっていた気がする。妥協せずに「最高バランス」を追求する彼は金曜、たびたびオーバーランをやってしまう。そうやってリズムを整えていくのはわかる。だがロズベルグは、満足ゾーンになくてもマシンに合わせこみ、ミスをせずに「最善バランス」で事を進める。「最高」か「最善」。どちらをとるか、方法論の違いをふたりに感じる。