更新日: 2018.05.08 18:09
デプロイ不足に悩まされたバクー戦、1点獲得もペースに落胆/トロロッソ・ホンダF1コラム
しかし決勝は予想外の展開になった。
1周目に出たセーフティカーからのリスタートで一時はニコ・ヒュルケンベルグまで抜いて7番手に浮上したガスリーだったが、そこからルノー、ウイリアムズ、ザウバー、フォース・インディア、マクラーレンに次々と抜かれてあっという間に13番手まで後退してしまったのだ。
「かなり車速差が大きくて、DRSゾーンにさえ入らないうちに抜かれてしまった。全く戦えなかった。今週末はずっと最終セクターの速さに苦しんできたけど、レースではさらに厳しかったんだ」(ガスリー)
スリップストリームの影響がない単独走行時には、STR13はDRSが閉じた状態で307km/h、DRSが開いた状態では323km/h前後でパワーとドラッグが釣り合った状態になっていた。これはフェラーリやウイリアムズとほぼ同じかやや速いくらいの数値だ。
しかし、レースでは前走車の1秒以内にいなければDRSを使うことはできないし、スリップストリームの効果を受けることもできない。スリップに入れば車速は優に10km/hは伸びる。ダニエル・リカルドが344.4km/hという驚異的な最高速を記録しているのはそのためだ。
しかしDRSが使えなければ最高速が伸びず、ブレーキング時の制動力も小さくなる。するとMGU-Kの発電量は減ってしまう。事前に“チャージラップ”でバッテリーをフル充電しておいてアタックラップに4MJ(1周あたりに使用できる最大エネルギー量)を使える予選アタックとは異なり、決勝では毎周充電できる2MJとMGU-Hからの発電量だけで賄わなければならない。だがMGU-Hは低速からの立ち上がりで発電に使えばターボの過給が下がってしまうため、常にフル発電できるわけではない。
ドライバーとしては、ラップタイムを速くするよりもバトルで抜いたり抜かれたりしそうになる場面でデプロイメントが欲しくなりオーバーテイクボタンを押す。発電量が充分でないところに想定外のバッテリー消費が加われば、どこでどれだけ発電しどこでどれだけ放電するかというエネルギーマネジメントは狂ってしまう。
全長が6kmと長く、しかも2kmという長いストレートを抱えるバクーだからこその難しさだ。