スペイン人ライターのF1便り:フェラーリの優先順位に変化の兆し。エースとしての正念場を迎えるベッテル
2019年シーズンが訪れて、フェラーリには特別な雰囲気があった。「今年こそは、チャンピオンにならなければならない」。これは、私がバルセロナで耳にした言葉だ。何年もかけて、彼らはメルセデスにどんどん近づいていって、オフシーズンテストでは期待の持てる速さを見せていたのだ。だが、開幕戦オーストラリアの現実がフェラーリと、そして誰よりもベッテルを打ちのめした。
今となっては、ベッテルは何に勝たなければならなかったのだろう?新たなチームメイトであるシャルル・ルクレールに打ち勝って選手権を3位で終えたところで、それが成功になり得るだろうか?モチベーションは何になるのか?そうして物事は間違った方向へ進み始めたのだと思う。
いっぽうルクレールは、第7戦カナダGP以降の8戦連続でベッテルを予選で上回っており、ふたりのタイム差は大きく広がっていることが多かった。ベッテルはルクレールよりわずかに強力なシーズンスタートを切り、またフェラーリから完全なサポートも受けていた。しかしシーズンが進む間に、マシン性能をさらに引き出せるようになったルクレールが、ベルギーGPとイタリアGPで連勝を飾ったのだ。
今ではフェラーリがチームの優先順位をベッテルからルクレールに替えようとしているように思える。だが、ベッテルが見捨てられることがないのは確実だ。フェラーリは過去数年にわたってベッテルに多くの借りがあるし、チームは彼を高く評価している。
ベッテルはチームからエースドライバーとして完全に重用されている状況下で才能のすべてを引き出すことができるということを我々は知っている。レッドブルでタイトルを獲得した2010年~2013年はチームから完全なサポートを得ていた。しかし、2014年にダニエル・リカルドがチーム内の争いに挑んできた時に苦戦。翌2015年からフェラーリへ移籍する決断を下している。