更新日: 2020.03.11 19:45
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム開幕直前編】組織づくりは道半ばも体制を強化。接戦の中団で上位復帰を狙う
チーム内の状況ですが、昨年の途中から組織などもずいぶんと変えてきているので、徐々にあるべき形になりつつあります。あとはスタッフたちの意識改革です。問題解決や開発部品の評価のプロセスがちゃんと出来ていなかったというのも反省点ですが、結局のところ最後は人です。実際にやっている人たちがきちんとした問題意識を持ってやっていないと、どんなに良い形やプロセスを作っても、意識のない人のところでダメになってしまいます。小さいチームとはいえ200人以上いるので、やり方を変えながら意思統一をするのも簡単ではありません。
チームが上手く動いていく為には、高いレベルで意識を持っている人達を要所に配置していかなければいけません。昨年の今の時期と比べるとかなりよくなっているし、今の組織は去年の中盤にはなかったもですが、これからも常に進化していかなければなりません。どこかひとつをよくしても、他で限界が見えてきたらそれに対処しなければならないので終わりのない作業です。
あとはチーム内のコミュニケーションですね。チーフレースエンジニアとしてトラックサイドだけを見ていた時は、みんな常に現場で顔を突き合わせているので比較的簡単に意思統一ができました。トラックサイドとビークルパフォーマンスグループというファクトリーで性能を見てくれる人たちとの共同作業も上手く行きました。
でもチームとしてよくなるためには、同じことをチーム全体でやらないといけない。そこには設計、空力、プランニングや購買部の人たちも関わってきます。ウチの場合はこのうち半数以上がイタリアにいるので、コミュニケーションはなお更のこと大変です。
バルセロナテストへ行く前にもイタリアに行きましたし、本当は第3戦ベトナムGP後にもイタリアに行く予定だったのですが、今はコロナウイルスの影響があり取りやめざるを得ませんでした。このイギリス・イタリア間のコミュニケーションの改善は、チームが前進する為には絶対的な必要条件だと思っています。
このように状況は改善されているものの、まだチームが本来あるべき形にできあがっているわけではありません。今はとにかくこれまで学んだことを活かして、効率よくチームを動かそうとしているところです。無駄なところには時間も金も人も使えないので、何が優先でどこに労力をつぎ込むのかを見極めて、わかりやすくいえば『当たり前のことを当たり前にできる組織づくり』をしていくことが2020年シーズンの目標です。
チームの成績としての目標は、やはり中団勢のなかでも上位で戦うということです。昨年みたいに予選一発は速いけどレースで戦えないというのではどうしようもないので、予選とレースを通して中団の前の方で戦いたいと思っています。
冒頭でも書きましたが、中団は今年もとても拮抗していると思います。サーキットの特性や路面温度など、いろいろなことが要因となって毎戦状況が変ってくる可能性があります。ウチの課題はアップダウンが激しいところにあるので、もっと安定して競争力をもって戦えるようになることが目標です。