更新日: 2021.07.01 19:11
【F1第8戦無線レビュー(1)】「謝らなくていいよ。来週がある」無念のリタイアも、再起を誓ったラッセル
ラッセルが8番手を快走する。今度こそウイリアムズでの初入賞を果たせるか。背後にはリカルドに代わって、角田が迫る。担当エンジニアのジェームズ・アーウィンが注意を喚起する。
アーウィン:後ろに注意だ。1秒2まで迫られている
とはいえラッセルのペースはその前をゆくフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やランス・ストロール(アストンマーティン)と変わらない速さで、11周目以降DRS圏内に入った角田も、なかなか仕掛けられない。
10周目にはペレスがノリスを抜いて3番手に浮上。次の周に同じようにノリスをかわしてペレスの後を追うボッタスに、リカルド・ムスコーニが攻めすぎないよう指示を出した。
ムスコーニ:ペレスは2秒前で、ギャップは縮まっている。でもタイヤを使いすぎるな

8番手ラッセルも、アロンソに近づいていた。
アーウィン:アロンソに近づいている。もうすぐDRSだ
追われる立場のアロンソは、ややペースに苦しんでいる。
カレル・ルース:タイヤの状態はどうだ
アロンソ:ステータス5だ。オーバーがひどくなっている。できればクールダウンしたいんだが

しかしラッセルはすでにDRS圏内に入り、アロンソは必死に逃げざるを得ない。すると18周目前後、ラッセルにこんな指示が飛んだ。
アーウィン:プランBに変更。信頼性の理由からだ。ペースを上げるんだ
新品ミディアムタイヤでスタートしたラッセルは、少なくとも25周前後まではピットインするつもりはなかったはず。この場合のプランBは、短いスティントを指すのだろう。「信頼性の理由」とだけ言われたラッセルはペースを上げようとしたが、アロンソに詰まったまま周回を重ねるしかない。その間にアロンソは、タイヤの状態が改善したようだ。
アロンソ:ターゲットラップで行くのか? もっと伸ばしてもいいよ
ルース:わかった。まずはターゲットまで行こう
ラッセルは25周目にピットイン。タイヤ交換はすぐに済んだが、マシン右側にメカニックが張り付いたままだ。ニューマチックバルブを駆動するエアが何らかの理由で漏れ、それを補充していたのだった。
アーウィン:長いピットストップになる。ニュートラルに入れてくれ。オレンジになったら1速だ
18秒もの滞留を経て、17番手でコース復帰。しかしエア漏れは治らず、次の周に再びピットに向かい、その後36周目にリタイアとなった。
アーウィン:申し訳ない。リタイアだ
ラッセル:謝らなくていいよ。来週があるさ
またもポイント獲得を逃したラッセルの無念さは想像に余りあるが、本人はあくまで冷静に再起を誓っていた。
────────────────────
(2)に続く