リカルド・ゾンタ、涙のポール・トゥ・ウインも届かず。シボレーの28歳が2度目の王座に/SCB最終戦
そんな未来を予感させる最終決戦の走り出しは、ポイントリーダーのカサグランデがネルソン・ピケJr.(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)らを抑えて順当にトップタイムを刻むと、予選ではラファエル鈴木とカサグランデを凌ぐ安定したパフォーマンスで、ゾンタが今季2度目、SCBキャリア通算7回目のポールポジションを獲得した。
「達成された偉業に対して神に感謝したい。今日は本当にたくさんのことが起こっていたんだ。実は早朝に起きた後、僕の目は完全に腫れていてドライブが可能か不安視されるような状態だった」と、これでボーナスポイント2点を獲得しバリチェロと並ぶランク6位に浮上したゾンタ。
「それにFPではクルマの調整にも失敗し、ポールを手に入れたのは『神の手』としか言いようがない。物事は正しい方向に進んではいなかったが、今はチームが明日の勝利を目指すために最速のクルマを与えてくれたとしか考えられない。誰もが僕を支えてくれる……これだけで僕は強くなれるんだ」
そんな感情に満ちた酷暑の日曜は、そのまま30分+1周の幕開けをゾンタが制し、今季3勝目(インテルラゴスで2回目)、ストックカーでは通算11勝目を“ライト・トゥ・フラッグ”で飾ってみせる。
その背後では、今季初表彰台となったフリオ・カンポス(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)を挟み、最終周まで鈴木とのバトルを演じ切ったカサグランデが3位表彰台をもぎ取り、シリーズ“3冠”のセラが5位に終わったことで、最終レース2では逆転チャンピオンに向けセラは勝利が必須となり、その上でカサグランデがノーポイントに沈む必要がある厳しい条件が突きつけられた。
迎えた決着の最終ヒートはファイナルラップのセーフティカー介入が流れを決定づけ、ここまで義務ピットを引っ張っていたマッサがイエロー掲示直前に作業へ飛び込み、あのF1時代以来となるインテルラゴスで15年ぶりの勝利を手にすることに。さらにマルコス・ゴメス(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)を挟んでバリチェロが3位に入り、表彰台で元フェラーリF1ドライバーが並び立つ演出で、跳ね馬の後輩を祝福した。
さらにその後方では、無用なリスクを避けるべく保守的な展開で21位チェッカーを受けたカサグランデに対し、セラも12位フィニッシュが精一杯の展開となり、シボレーをドライブするパラナ州出身の28歳が自身2度目のシリーズチャンピオンを手にした。
「もう疲労困憊だ(笑)」とサンパウロ南地区の猛暑にも体力を奪われたと明かした新チャンピオン。「命という贈り物と、ふたたびここでこの挑戦をする機会と能力を与えてくださった神に感謝しなければならない。(初タイトルでは)もっと緊張したが、今回はもちろん緊張しつつ、うまく状況をコントロールすることができた。僕らは2度のチャンピオンだが、ここでは立ち止まらない。さらなる挑戦を目指すさ」
これで年間22レースのうち24名が表彰台を経験し、うち12名が勝利の美酒を味わったシーズンは、トヨタとシボレーが12勝ずつを分け合う拮抗した勢力図を保ち続ける結果となり、来季2024年3月初旬の開幕戦ゴイアニア、アウトドローモ・インテルナシオナル・デ・アイルトン・セナでも、このパフォーマンス・バランスが維持されることとなりそうだ。