再開となったテキサス戦、負のスパイラルに陥り琢磨は挽回できず
しかし、この状況は決して楽観のできるものではなかった。トップグループの真ん中で、琢磨は問題なく走れるのか疑問のあるマシンでスタートを切るからだ。いきなりフルスピード・バトルに加わる訳にはいかない。まずはマシンがトラブルなく走れるものになっていることを確認し、正しくセッティングされているかもチェックする必要があった。ポジションはひとつでも上位に保ちたいが、周りを走るライバルたちに迷惑をかけることも絶対に避けねばならなかった。
■マシンは改善されず不完全燃焼なレースに
新セッティングでリスタートからアグレッシブに走り、ヒンチクリフをパスしたところでフルコースコーション発生、リードラップに戻る……というシナリオを描いて迎えた週末だったが、琢磨陣営は負のスパイラルに陥っていた。
一度悪い方に転じ始めた状況が好転することはなく、クルーたちが時間切れギリギリまでかかって修理してくれたマシンは残念ながらセッティングが正しく施されておらず、前方の車高が高過ぎる状態になっていた。
ハンドリングは苦しく、ピットインしてセッティング変更を施してもタイヤの摩耗が早く、短いサイクルでのピットストップを繰り返すしかなかった。そのうちに無線も通じなくなった。そんな状況では走り続けてもリスクを増やすだけのため、琢磨は90周、6月の走行分と合わせて160周を終えたところでピットロードに入り、マシンを降りた。
レース後に琢磨は、「プラクティスで部品のトラブルがあってクラッシュした。1周しか走ることができなかった。クルーたちが頑張ってくれ、短時間でマシンをグリッドに並べるところまで直してくれたのだが、いざレースが始まってみると我々は多くのトラブルが見舞われた」
「マシンにスピードがなかった原因は、まだハッキリとは判明していないが、とても残念な週末になってしまった。それでも、今年は高速オーバルでの予選用セッティングはレベルの高いものを作り上げることができていた。レースでのスピードを確保する件に関しては、来年への課題としたい」と話していた。
不本意なレースが二つ続いてしまった琢磨とAJフォイト・レーシングだが、もう今シーズンのレースも残すところ2戦のみとなった。キャンセルになったボストンのストリートレースの代わりに急遽開催されることになった今週末のワトキンス・グレンと、9月18日決勝の最終戦ソノマ、いずれもテクニカルな常設ロードコースがその舞台だ。残り2戦、佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングがどんな走りを見せてくれるのだろうか。