投稿日: 2024.08.08 11:46

悪コンディションでの強さはキャリア初期の“逆境”の賜物「見極めの判断が早くできる」坪井翔のタイヤマネジメント術


スーパーフォーミュラ | 悪コンディションでの強さはキャリア初期の“逆境”の賜物「見極めの判断が早くできる」坪井翔のタイヤマネジメント術

──ところで坪井選手といえば、雨や半乾きのコンディションで速いイメージがありますが、グリップが低いコンディションでなぜ速いのだと思いますか。

坪井:……難しいですね(笑)。まず、どういう状態でグリップしていないかにもよります。発熱してなくてグリップしてないときは、いかにタイヤを温められるかという話になってきます。セットアップを含めて温め方に対しての技術の差みたいなものが、とても出る状況だと思いますね。

 一方で、タイヤは温まっているけどグリップがない場面については、ドライバーの技術が試される状況です。僕自身、そのルーツはカート時代に遡ると思います。それほど裕福な家庭でもなかったので、ウエットタイヤがあまり買えなかったんですね。それで、雨が降ったときにドライタイヤのままで走る、みたいなことをよくやっていました。当然滑るわけですが、そのなかでグリップさせられるかとか、速く走れるかというのは、その頃から身についてきたものが大きいと思います。

 そこがベースにあり、全日本F3やFIA F4でも雨が降ると結構前の方を走ることが多かったと思います。ウエットになると毎周、コーナーによって水の量が違ったり、アウトから入った方が速い・インから入った方が速いなどといった形で、通常のセオリーがなくなりますが、そこの見極めの判断が早くできて、適切な場所を見つけて走れているというのはあると思います。

 あとはタイヤの使い方で、『縦に使う』ことがわりと上手にできているのかな……自分でもよく分かりませんけどね(笑)。横に力をかけながらアクセルを踏んだりするとやはり滑ってタイムを失うだけでなく、タイヤの摩耗も進むので、縦に縦にと使うことを意識しています。それは、タイヤを温めるにしても同じことです。もちろん、周りもみんなプロなので、意識している箇所はある程度一緒だとは思いますが。

坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
2024スーパーフォーミュラ第4戦富士 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)

──ウエットタイヤは、路面が乾いてくるとすぐに摩耗してしまうと思いますが、そこをできるだけマネジメントするための技術も同じ理屈でしょうか?

坪井:同じですね。タイヤをオーバーヒートさせないために、縦を意識します。横に使った時点で、ゴムが引きちぎれてしまうので。もちろん、なるべくタイヤを冷やすように直線では水のあるところを走るといったこともしますが、その『縦』が一番のポイントかなと思います。

 あとはカウンターを当てない、ハンドルをこじらない。もともと僕がそういうスタイルなのかなと思いますが、トラクションのかけ方というのが、わりと上手にできて、人よりも全開にするポイントが早いのではないかと思っています。

──今季これから先、タイヤ的な面で「ここが一番厳しいラウンドだな」みたいな予想はありますか。

坪井:全部ですね(笑)。とくに決勝に関しては全部タイヤとの相談になるので……ただ暑ければ暑いほど厳しいと考えると、(第5戦のモビリティリゾート)もてぎですかね。あとは今回の第4戦。この前のテストみたいに路面温度が50度に達してしまうと、温度でタレてしまうし、富士は高速コーナーも低速コーナーもあってタイヤの負荷が結構厳しい。結構、速い人と遅い人が明確に分かれるのではないかと思います。

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 インタビュー後の第4戦決勝は、スタート前の時点で気温32度/路面温度45度というコンディションとなったが、終始安定したハイペースで走り、4番グリッドから優勝を手にした坪井は、間違いなく『速い人』の側であった。タイヤマネジメントと悪コンデイションへの対応力を武器に、後半戦もタイトル争いの中心となっていきそうだ。

坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)
2024スーパーフォーミュラ第4戦富士 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)


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