更新日: 2016.09.29 14:25
関口雄飛 スーパーフォーミュラ第6戦SUGO レースレポート
そして迎えた決勝当日。スーパーフォーミュラのレースの中で、間違いなく歴史に残る素晴らしいレースが展開されました。主役はたったひとり、関口雄飛です。
関口雄飛は日本のモータースポーツ界そのものを震撼させたといっても過言ではないでしょう。スポーツランド菅生に詰めかけた観衆は、その圧倒的な速さと、諦めない心、そして夢を実現しようとする強さに感動し、チェッカーフラッグが振り降ろされた時には、場内全体から惜しみない拍手が送られました。
このレースはスタートが勝負。そう言い聞かせて自分を奮い立たせ、何度も練習を繰り返した関口雄飛は、スタートを巧みに決めてトップに立つと、すぐに大量リードを築き始めました。まさにぶっちぎり、その言葉以外には適切な表現が見つけられないほど、1周ごとに2番手を引き離しにかかりました。
しかしレース中盤、スピンして停止したマシンを排除するためにセーフティーカーが突然、関口雄飛のマシンの行く手を阻みます。14秒近くあったリードが一瞬にして消えたばかりか、逆にセーフティーカーが入ったタイミングが最悪で、関口雄飛だけが規定のピットストップをこなせていない状況でした。騒然とするピット。トップに位置するものの、実質的には最後尾です。観衆の誰もが今回の関口雄飛の敗北を意識しました。
関口雄飛は無線でピットに「このタイミングって、もしかして最悪じゃないですか?」と話しかけると、ピットからは「そう、最悪だよ」とかえってきました。一瞬、ヘルメットの中で悔しさと怒りの混ざった感情が沸き起こり、関口雄飛の頭の中で、パチンと何かのスイッチが入りました。
「諦めるな、まだ頑張ればいける」という無線がピットから入り、そこからさらに鬼神のようなプッシュが始まります。
セーフティーカー解除と同時に、全開に次ぐ全開。毎周1秒以上、後続車より速く駆け抜けました。4輪が滑ろうと、マシンが暴れようと、決してアクセルを緩めることなくコントロールし、ファステストラップを連発しながらサーキットを突き進む関口雄飛。もはや勝機はないと考えるのではなく、攻めて、攻めて、攻めぬいてこそ不可能と思われることも実現すると信じて、チームと一丸となって戦いました。
そして計算上、31秒以上のリードがあればトップのまま復帰できるかもしれない状況の中、54周目には34秒811までリードを広げ、不可能を可能にしてしまった関口雄飛とITOCHU ENEX TEAM IMPULのスタッフたちは、68周レースの55周目にピットインを敢行。計算どおりの8秒ピットストップで、そのミッションをやり遂げたのです。
トップでレースに復帰した関口雄飛は、さらにライバルたちを突き放し、もはや誰もが言葉を失う速さを見せつけながらチェッカーを受けました。今季2勝目、再びポイントリーダーに返り咲いたのです。 拍手喝采、感動、興奮。まさにこれが星野イズムの真骨頂といったレースでした。優勝、関口雄飛。ポイントリーダーとして、初のルーキーチャンピオンがかかった最終戦に臨みます。