更新日: 2018.05.11 11:13
スーパーGT:SUBARU BRZが手にした最高速と背負ったリスク/GT300トピックス
■成長しているのはウォーキンショーだけじゃない!? 変則予選に向けたタイヤ作りと高木の“技”が活きた完勝
5月3日の予選日は、朝からの濃霧により予定されていたおよそ1時間30分の公式練習が中止となった。予選はQ1、Q2のノックアウト方式ではなく20分間の1本勝負となり、その前に30分間の公式練習という変則的なスケジュールに改められている。また、予選ではタイヤを2セット使用することも認められた。
タイヤには“おいしいポイント”が存在し、予選ではグリップ力を最大限に発揮できるその1~2ラップでアタックするのがセオリーだ。2セット使えれば“おいしいラップ”は倍増することになる。しかし、マザーシャシーのような軽いクルマはタイヤのウォームアップが遅く、1セットしか使えないチームも見られた。
重量級のGT3はタイヤを温めやすいといえるが、20分間の予選で2セット使えるかどうかは絶対ではない。そこでARTA BMW M6 GT3は予選で2セット使うことを見据え、30分間の公式練習で予選用タイヤを作っていたという。
ARTA BMWが今回持ち込んでいたタイヤは、3~4周目が“おいしいポイント”。いつもはアウトラップに時間をかけてゆっくりとタイヤを温めているが、20分間で2セットのタイヤを使おうとするとアウトラップに時間をかけられない。路面コンディションも一定ではないため、アタックラップが前後する可能性もある。それを見越して、公式練習ではスクラブ2周と1周のタイヤを作った。
予選を担当した高木真一は、アウトラップをいつも以上のハイペースで走り、1セット目となった2周スクラブのタイヤでピークがどこに来るかをチェック。そして1周スクラブの2セット目で1分36秒573を叩き出し、最多タイとなる13回目のポールポジションを獲得した。
高木のポールポジションには、ベテランの“技”も大いに影響していた。昨年からの相棒となるショーン・ウォーキンショーは、ブレーキングレベルが高いという。「ショーンは若いからブレーキ踏力が違う」と冗談交じりに話していた高木は、昨年の第5戦富士、「ABSの入りを感じながらブレーキングすることで、1コーナーのブレーキングポイントが怖いぐらい奥になった」と、ポールポジション獲得の理由を明かしていた。
そして今回の予選ではアタックラップのなかで、コーナーごとに異なる路面ミューに応じて、ABSの効き具合を調整していたという。「ざっくり言うと、ABSはドライ用とウエット用をダイヤルで調整できるんだけど、それを場所によっていじっていただけ。経験からくるひらめきでやっているので、まだ開発段階」と高木はいうが、その使い分けが単純ではないのは言うまでもない。また、「開発段階」ということは、さらなる伸びしろを秘めていることにもなる。
決勝は、危なげない走りでそのまま逃げ切り優勝。昨年の第2戦富士は9番手からスタートし、決勝では接触もあって入賞を逃していた。今回はポールポジションからスタートし、中段グループで多い接触のリスクを回避できたのも優勝できた要因だという。
今回のポール・トゥ・ウインは、スケジュール変更に即座に対応して予選に向けたタイヤを作った公式練習から、すでに流れをつかんでいたのだ。そのタイヤを作ったチーム力、いまだ進化を続ける高木の技、GT300参戦2年目を迎えたウォーキンショーの成長──。通算19勝目で単独最多勝となった高木は、「今年は優勝よりもチャンピオンを獲りにいく」という。その確率が高いことを知らしめる一戦となった。