更新日: 2019.07.01 11:49
灼熱のなかの大混戦。GT300上位陣それぞれのレース終盤の展開の舞台裏《第4戦タイGT300決勝あと読み》
一方、上位を争ったマシンたちにはそれぞれのドラマがあった。セーフティカー導入時に2番手を争っていたD’station Vantage GT3は、今回セットアップが進みトップ争いをするまでにポテンシャルを上げていた。
序盤からHOPPY 86 MCを追っていたD’station Vantage GT3のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラは、タイヤをもたせながらペースを守り、一瞬のチャンスを狙って2番手へ。今季これまで1ポイントも得ていないチームは、優勝をもぎとるべく戦略を練っていた。
採った戦略は、ピット作業時間を短縮するべく、左側のみの二輪交換というもの。セーフティカー導入直前にピットに入っていたため、そのままリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの後方に出ることに成功した。
ただリスタート時、トップを狙った藤井誠暢は前にいたラップダウンに一瞬詰まり、加速に優るGT-R勢に先行されてしまった。それでもLEON PYRAMID AMGとのバトルを展開し、今季初ポイントを目指していたものの、右リヤタイヤのパンクチャーに見舞われてしまい、悔しい結末になってしまった。
トップを争っていた集団では、HOPPY 86 MCはポールポジションだったものの4位フィニッシュ。タイヤ無交換作戦は採っていたが、「予想どおりになったね(土屋武士監督)」という結果となった。筆者はグリッドで土屋監督と話していたが、そのとき出ていた予想順位が4位だったのだ。
「ここは速いクルマが何台かいて、無交換や二輪交換をするチームが多いと思っていた。タイでウチが速いイメージがあるのは、松井孝允がいるだけなんです。クルマで勝つのは至難の業」という。
ちなみに、HOPPY 86 MCにとってポジティブな要素としては、タイヤ開発がさらに進んだこと。そして土屋監督はこうも言う。
「ひとつみなさんに言いたいのですが、よく『MCは直線も速い』と言われますが、直線も速いクルマはストレートで抜かれませんよねと(笑)。スタート直後も一切ミスはしていないですから。直線が速いのではなく、ペラペラなダウンフォースで走って、ストレートエンドが伸びるようにしている努力を知ってほしいです」
そして同じくタイヤ無交換作戦を採ったのは、序盤トップ10圏内を争ったグッドスマイル 初音ミク AMGだった。ただ、LEON PYRAMID AMGと同時期にピットインを行おうとしたものの、「そうしたらどんどん前を走っているクルマがピットに入ったので、前が開けた(河野高男エンジニア)」と空いているスペースができていった。
もともと無交換作戦ならば、終盤までピットインを遅らせて燃料搭載量を減らす方がタイヤには優しい。そんななかでGT500クラスのアクシデントが起きるのだが、「セーフティカーにはならないと思った」とピットインのタイミングを逸してしまう。わずかなタイミングのズレで、グッドスマイル 初音ミク AMGにとっては機会を逸することになってしまったのだ。
ちなみに、このチャン・インターナショナル・サーキットでのスーパーGTでセーフティカー(SC)が導入されるのは、この2019年大会が初。もともとランオフも広いコースなので、SCが出づらかったのだ。
上位陣にはさまざまなドラマがあったスーパーGT第4戦タイ。結果的にトップ争いはGT-R同士の争いとなったが、その他にも多くの見応えがあるレースとなった。