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投稿日: 2020.06.25 13:36
更新日: 2020.06.30 11:11

いまや絶滅危惧種の職人魂。つちやエンジニアリング流“GT500独自チューン”の妙技【スーパーGT驚愕メカ大全】


スーパーGT | いまや絶滅危惧種の職人魂。つちやエンジニアリング流“GT500独自チューン”の妙技【スーパーGT驚愕メカ大全】

 
 あるときは、非常に目立たない工夫ではあったがフロントフェンダーとバンパーの継ぎ目にアタッチメントを増設してフェンダーをわずかに膨らませるという改造を繰り出した。これはボディ外板で何かを起こそうとしたのではなく、タイヤハウス内部の容量を増やし、空気を流れやすくすることが狙いだった。

 当時のSC430はフロントリップスポイラー下面を少し持ち上げて空気を積極的にエンジンルーム床面に流し込み、床面に設置したフロントディフューザーを通して空気を車体側面へ引き抜くことでダウンフォースを生み出していた。その空気の流速をもっと上げてやればダウンフォースはもっと増える。それなら空気の流れを改善するためにタイヤハウス内側の空間を拡げて空気が流れやすくしてやろう、という発想である。

 話を聞いて注視しなければ違いを見落としてしまうような改造ではあったが、ドライバーが体感できる程度のダウンフォース増加があったというから、現場職人の発想はあなどれない。

08年第2戦岡山、「かさ増し」されたTOYOTA TEAM TSUCHIYAのフロントフェンダー。
08年第2戦岡山、「かさ増し」されたTOYOTA TEAM TSUCHIYAのフロントフェンダー。

 その他にもこの時代のつちやエンジニアリングは、フロントのリップスポイラー両端にサイドフィンを立てるなど細かい工夫も行なっている。

 また、TRDは純正でリヤウイングステーの間を繋いでステーの剛性を上げるためのクロスバーをシーズン途中で各チームに供給したが、つちやエンジニアリングはわざわざほぼ同じ形状のクロスバーを自製して「少し軽いモノ」を使っていたこともあった。職人の情熱ここにありという対応である。

 こうしたつちやエンジニアリングの工夫について、車両を開発供給するTRDは興味深く眺めていたようで、当時のTRDの担当者は「彼らは、土屋(春雄)さんの創意と工夫があふれたクルマ作りをしていて、TRDが思いつかないようなアイデアを提案してくれます」と肯定的な感想を述べていた。

 しかし近年は、レギュレーションが創意工夫を制限する方向に進んだこともあって、基本的にチーム独自の改変は許されてはいないようだ。

 その結果、近年ではこうした現場の創意工夫いわゆる職人技は、JAF-GT300クラスの車両でわずかに見られるくらいで、クラス1規則を採用するGT500クラス、GT3クラスにおける現場での作業は公認パーツの交換だけとなってしまった。「自動車レース」の魅力が若干ながら薄まっているように感じるのが少々残念ではある。

つちやにとってのGT500最終年となったこの年、ドライバーは土屋武士と石浦宏明のコンビで入賞5回、ドライバーランキングは15位だった。
つちやにとってのGT500最終年となったこの年、ドライバーは土屋武士と石浦宏明のコンビで入賞5回、ドライバーランキングは15位だった。


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