エンジン単体での進化度トップはGT-Rか。最高速王はGR Supraが維持【2021年GT500テクニカル分析1】
HRD Sakuraの佐伯昌浩ラージ・プロジェクトリーダーは、「今年の1基目のエンジンは馬力も上がっていますが、それよりも軽量化のほうの取りぶんを重視しています」という。
NRE(ニッポン・レース・エンジン)規定の4気筒直噴ターボは年々パフォーマンスが上がっているが、燃焼圧の高まりに伴いブロックやヘッド等「骨格」の強化が必要となり、重量が増す傾向にある。それはホンダに限ったことではないが、耐久性を求めるべく、エンジンの重量増につながっている。
しかし、補機類に関しては余裕を持ちすぎた設計だったという反省もあり、今回徹底的に軽量化が進められた。たとえば、フロントに位置し運動性能にも影響するラジエターパイプは、ライバル車と比べても一目瞭然なほど細くなっている。細くなれば内部の保水量も減り、軽量化に大きく寄与する。
それ以外にも、大型鋳物部品の開発が凍結され軽量化が困難なエンジン本体以外の部分で、グラム単位、ならぬキログラム単位の大幅な軽量化を実現したというから驚く。
なお、従来からの美点であった燃費の良さは、ライバルにやや差を詰められながらも依然トップレベルにあり、それがピットウインドウを広げ戦略の自由度を高めている。
燃費の良さについては、ホンダだけがアンチラグを多用しないことも理由のひとつと考えられてきたが、今シーズンのエンジンに関してはアンチラグの使用量、頻度をやや増やしているという。
「エンジン諸元との組み合わせで、完全にオフで走るにはちょっと物足りないなと。使わなくても走れなくはないのですが、昨年までよりも少しパワーを取りにいったりすると、バランス的に少し必要になってくるので」と佐伯氏。従来よりもやや高回転寄りの基本特性となり、それを補う必要が生じたと理解すべきだろうか。