更新日: 2021.07.28 11:57
テストでの“判断ミス”と暑さが響いたもてぎ戦。そして良好なコンビ仲の秘訣【井口&山内のBRZコラム Vol.3】
まとめ:autosport web
ではここからは前回の卓ちゃんのコラムとは逆に、僕が卓ちゃんとの出会いや彼の存在について、語ってみましょう!
といっても、僕も卓ちゃんと同様、初対面がいつだったのかは曖昧です(笑)。記憶をたどると……キャリア的には僕の方が先にトヨタの育成プログラムに入っていたので、最初は卓ちゃんの方が年下かなと思ってたんですが、どこかのタイミングで向こうが年上(編注:同じ1988年生まれだが学年は井口がひとつ上)だと知り、ちょっと気まずかった覚えはあります(笑)。
卓ちゃんは当時の僕のことを「怖い印象だった」と言っていましたが、F1を目指してトヨタの育成プログラムにいる以上、「周りは全員敵だ」と思ってやっていましたし、正直、仲良くする意味が分からなかったんです。
なので、仲良くなったのは、やはり育成プログラムを出てからじゃないでしょうか。同じような境遇の蒲生尚弥選手、松井孝允選手、そして吉田広樹選手とも、その頃から仲が良かったです。
話は少し変わりますが、トガってた僕が変わるきっかけになったのは、2013年にJLOCからGT300に出場した際にコンビを組ませてもらった吉本大樹さん、そして翌年にゲイナーで一緒に戦った植田正幸さんの存在です。
それまではGTでもすごく“バチバチ”やってたんですけど、やっぱりそれだと結果が出ない。そのあたり、吉本さんははっきりと言ってくださる方なのでいろいろと教えていただきましたし、植田さんには“パートナーと組んで一緒に結果を出す”ことの楽しさを教えてもらいました。ゲイナーのチームの皆さんからも、たくさん学びましたね。本当にありがたかったです。
そんなわけで、2015年にSUBARUに加入して卓ちゃんと組めたのは、本当にタイミングが良かったと思います。前のまんまの僕だったら、誰と組んでも絶対にうまくやっていけなかったでしょうね(笑)。
卓ちゃんとの関係性も、コンビを組んでからいままで、そんなに変わってないんですよ。基本的には卓ちゃんの方が大人しいというか、落ち着いているというか。あと、すごく気を使ってくれる人なんだなぁ、と。
僕が後から加入したこともあり、当初はテストでも卓ちゃんがタイヤ評価を全部やり、僕がロングラン担当という形だったのですが、「山ちゃんにもニュータイヤを履いてもらって、お互いタイムが出るようにやりましょう」と、卓ちゃんからチームに提案してくれたことがありました。想像以上に気を使ってくれる人なんだな、というのは組んでから分かったことですね。
対して僕は、やっぱり感情的に突っ走ってしまうタイプ。そういえばSUBARUに加入した当初、無線のところに「敬語!」って書かれていたこともありましたね(笑)。レース中、どうしてもアツくなると無線でタメ口になっちゃってたんですが、TVとかでも映像・音声が使われる可能性もあるので……というチーム側からの配慮でした。まぁ、いまでもアツくなったら敬語ではなくなっていると思いますが(笑)。
卓ちゃんは常に相手を傷つけないような話し方をしますし、そこからは僕もだいぶ勉強させてもらったと思います。いまでもどうしても、僕の方が少しストレートな物言いにはなってしまうんですけど、やっぱりチームスポーツなので、コミュニケーションは大事ですからね。あとはとっても家族思いなところも、卓ちゃんから学ばせてもらってますね!
以前は正直、バトルになったときに引いてしまう卓ちゃんの“優しさ”が気になることもありました。僕らBRZはストレートが劣るので、バトルの時に引いてしまうと完全に打つ手がなくなってしまいます。でも僕が口に出すまでもなく、卓ちゃんの方から「一緒にシミュレーター行ってもらえますか」と言ってくれたりするようになって嬉しいです。そういうところに、コンビがうまくいく秘訣があるんじゃないかと思います。
さきほど名前を挙げたところでいえば、蒲生選手も松井選手もGT300のタイトルを獲っています。コンビ歴は長くなってきているけど、卓ちゃんと僕はまだそこに手が届いていない。だからこそ、このチームで、卓ちゃんと一緒に、絶対にタイトルを獲りたい。
ありがたいことにSUBARUファンの皆さんからもすごくアツい応援をいただきますし、それに応えたい気持ちも強いです。ドライバーのどちらかがその目標に対して少しでも醒めていると、タイトルへの思いを発言すること自体に恥ずかしさを感じてしまうと思いますが、僕らにはまったくそれがない。むしろ、期待に応えたいという気持ちがお互いの行動に表れていて、それがさらにチームにも伝わり、「全員で頑張ろう!」という雰囲気がすごくあるんです。
もてぎ戦はうまくいきませんでしたが、引き続き悲願のタイトルを目指して全力で戦いたいと思います!