更新日: 2024.07.24 15:00
YARTヤマハ 2024EWC第3戦鈴鹿8時間耐久ロードレース 決勝レポート
Rd.03 7月21日 日本
■開催日:2024年7月21日
■大会名称:世界耐久選手権 第3戦鈴鹿8時間耐久レース
■開催地:日本/鈴鹿サーキット(5.821km)
YARTが2位、2004年の参戦以来、鈴鹿で初の表彰台を獲得、EWC最速チームに
2012年、2013年以来となるポールポジションを獲得した#1 YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team (YART)。しかし、過去のポールポジションは、鈴鹿8耐でチームに特別加入した中須賀克行が記録したもので、マシンがEWC Formula仕様に統一された2008年以降でEWCライダーがポールポジションを獲得するのは鈴鹿8耐初のビッグニュースとなった。
なお、TOP10トライアルでポールポジションタイム2分05秒130を記録したのはマービン・フリッツ選手で、公式予選で最速タイムを記録して最終出走者となったカレル・ハニカ選手のタイムが期待されたが、NIPPOコーナーで激しく転倒してノータイムに終わった。
決勝レースのスタートライダーを務めたのはニッコロ・カネパ選手。チームのエースで、速さと的確な状況判断でレースを組み立てることができるライダーだ。そして恒例のル・マン式スタートでは好スタートを切り、#37マイケル・レイターバーガー選手(BMW)に次ぐ2番手で1コーナーに進入。そして最終シケインではレイターバーガー選手を抜きトップに立ってオープニングラップを終える。
カネパ選手は5周目までトップを走るが、6周目に#2水野涼選手(ドゥカティ)に先行を許してしまう。しかし、8周目の最終シケインでトップの座を奪い返すなど、レース序盤は#30高橋巧選手(ホンダ)を加えた数名で首位攻防が繰り広げられた。
その後、徐々に#30 Team HRC with Japan Post(ホンダ)がペースを上げ、さらにピットインのタイミングで首位を独走し始める。そしてYARTはカネパ選手からマービン・フリッツ選手、そしてカレル・ハニカ選手へとYZF-R1を引き継ぎながら単独2位の座を確立していった。
レースが約半分を終えた頃、Team HRC with Japan Postと、YARTが同一周回数でトップを争い、3番手以下はラップ遅れとなっていた。そしてレース終盤、YARTはトップの#30ホンダとのタイム差を約48秒にまで詰めると、#30ホンダが最後のピットインの際にピット作業のルール違反により40秒積算のペナルティが科せられた。この裁定が下されたのがチェッカーまで残り約5分の19時25分で、この時YARTとトップ#30ホンダとの差はペナルティの40秒を引いて約11秒差となっていた。
レースも大詰め、218周を過ぎた段階でYARTはトップから10秒5遅れの2番手。219周を終えての差は8秒9。そして220周の鈴鹿8耐の最多ラップを記録しチェッカーを受けた時、YARTとトップの差は7秒860と、最終的な結果は2位となった。
2004年から鈴鹿8耐に参戦しているYARTにとって今回が初の表彰台となり、この結果YARTはEWCのポイントランキングで首位に浮上し、最終戦ボルドールでの24時間耐久レースでは2年連続、3回目のチャンピオンに挑むことになった。
YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team 決勝:2位(220周)
ニッコロ・カネパ選手談
「このレースの唯一のミスは、最初のスティントで最適なタイヤを選べなかったことです。スタートは良かったのですが、すぐにフィーリングが良くないことに気がつきました。そこで作戦を変更し、まずはライバルの前に出て、彼らを逃がさないようにしました。できるだけ抑えたけど後半は難しかったです。2・3回目のスティントは安定したペースで走ることができました。僕らは後方との差をうまくキープしていましたが、恐らくHRCも僕らとの差をキープしようとしていたので、差が変わらなかったのだと思います。それでも表彰台に立つことができてよかったです」
「チームとチームメイトに感謝です。ピットワークが素晴らしく、後方のチーム考えなくていいぐらい楽にしてくれました。
今年は、ル・マンこそ3位でしたが一番速かったし、スパも圧倒的に強く、鈴鹿もEWCチームではトップになりました。ボルドールのストレートは大変ですが、今年は僕らがこのEWCで最も強いチームだと思うし、チームの雰囲気は素晴らしく、連覇したいと思います」
マービン・フリッツ選手談
「暑さと湿度、最も大変な8耐でした。スティントの最後は集中力が持ちませんでした。頭がクラクラになるレベルでした。でも、ピットストップも速かったしミスもなく、最後まで諦めなかったチームを誇りに思います。自分もとても安定していて、あるスティントではほとんどのラップで、トップとの差が”40秒”と出ていたくらい。それがとても嬉しいことでした。もちろん40秒の差を縮めようと、プッシュしていましたけどね」
「最後の2時間はもう2位を確実に取ろうと思っていました。そこでペナルティが出て、カレルにプッシュするように伝えましたが手遅れでした。それでもチームが最大限を尽くして鈴鹿のホームチームと最後まで戦い、最終的に7.8秒差まで追い詰めたのはすごいことです。勝てなかったのは残念だけど2位は素晴らしく、夢の表彰台に立てたし、一番大事なポイントを取れてよかったです。これで6点リードしているから、ボルドールには自信を持って連覇を目指します」
カレル・ハニカ選手談
「キャリアの中で最も大変なレースでした。こういうコンディションでしたからね。メンタル的にも早くボックスに戻りたいと考えてしまうぐらいでした。でも、チームは本当に素晴らしい仕事をしてくれていたので、チームをがっかりさせたくなかったから最大限でプッシュしました。でも最初のステイントはうまくいかず、2回目はよくなりました。そして最後はとにかく無事に終えることに集中していましたが、ライバルのペナルティを知ったのは、残り3ラップぐらいで、勝利のためにプッシュしましたが、もう手遅れでした」
「2022年から表彰台を目指してきましたが、今年、ついに辿り着くことができました。鈴鹿の表彰台は格別。世界一のファンがいるからだと思います。本当に楽しかったですね。来年、もう一度味わいたいですね。そしてEWCのライバルよりもポイントを取ることができ、目標を達成できました。だけど差は数点しかないので、最後のレースは激しいバトルになると思いますが、連覇のトロフィーを皆さんに届けられるよう100%で挑みます」
マンディ・カインツ監督談
「完璧なレースを行うこと。他チームを意識しないこと。それができたレースです。最初のスティントはカネパらしいものでした。完璧なスタートで、レースをリードしましたが、フロントタイヤの選択ミスがあり、スティント終盤に後退してしまいました。また、ここまで暑い状況を経験していなかったこともあり、それまでは簡単に7秒台に入っていましたが、このレースでは8〜10秒台になっていました。ハードで大変なレースでトラブルなしでフィニッシュできたこと自体がすごいことです」
「ライバルに40秒のペナルティが出た時はほとんど時間が残っておらず、リスクを承知でプッシュするか、2位を狙うか迷ってプッシュすることを選びましたが、カレルにうまく伝わらず、手遅れでした。ここ数年は表彰台を獲得できる力があったけどミスもあり届きませんでした」
「でもようやく今回、私たちの実力に相応しい結果になりました。また今回は、レギュラーメンバーで表彰台を取れたことは素晴らしいことで、ライダーとスタッフ、ヤマハやブリヂストンのおかげです。最終戦は6ポイント差で迎えます。もうすべてをかけるだけです。正直、ボルドールは苦手なサーキットだけど、昨年はそんなに悪くなかったのでアタックモードで挑みます」