F.C.C.TSR Honda France 2021EWCエストリル12時間耐久ロードレース 決勝レポート
2021.07.18
F.C.C. TSR Honda France、2021シーズン初優勝、世界耐久2戦目にして美酒に酔う裕紀!
本当ならこの日程で開催されていた鈴鹿8耐に代わり、ポルトガルはエストリルの地で開催されたFIM EWC2021エストリル12時間レースは、サバイバルレースの様相も呈しながら進み、4番手からスタートしたF.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック/高橋裕紀/マイク・ディ・メリオ組)は見事優勝を飾った。
いきなりグリッドへの移動が始まった昨年とは異なり、8:15から15分間、計測のないウォームアップ走行が行われた後、コース上に整列、ウォームアップで1周した後に12時間先のゴールを目指してレースがスタートした。
スタートライダーのマイクは好スタートを決め、トップで戻ってくるが、その後#37のBMWが先行し、それをマイクと#1SERT、#7YARTの3台、#11SRC KAWASAKIがやや離れて追いかける展開となり、これら5台の争いでレース序盤は進んでいく。
崩れたのは#37が転倒して後退した83周あたりから。その後100周目には#1SERTもクラッシュ。レースには復帰するが、#37同様に大きく後退してしまった。実際にSC(セーフティカー)も何度か介入するなど、サバイバルな耐久レースらしい雰囲気を漂わせ始めた。
ウィーク前半は快晴で強い日差しながらも、強く冷たい風が吹き荒れたエストリル地方だったが、週末に入り風が収まると気温30度超、路面温度55度以上という、鈴鹿8耐さながらの真夏の耐久レースとなった12時間耐久レース。近年のEWCでは、おそらく無かった気象条件でのレースは、残った上位3チームにも襲いかかる。我々にも例外ではなく、前日までとは違ったタイヤチョイスを迫られていたからだ。
レースが中盤6時間を過ぎて、8時間経過時点の順位で獲得できるボーナスポイントをにらみ、我々と#7YART、#11SRC KAWASAKIの3台は、ピットストップのタイミングで順位を前後させる。#11は当初から1スティントにおける周回数が少なく、終盤にはピットストップ回数が鍵を握るか、我々もブレーキキャリパー交換をどのタイミングで行うか、などライバルチームの動きと自分たちのチームの動きを織り交ぜながらの、今度は神経戦となった。
その中で#7YARTが230周目に転倒!その後レースには復帰したが、戦線を離脱した。残ったのは#11をトップとした我々と2台。17:00の8時間経過を目前に、またもやSCが介入。レース復帰後じわじわと上位陣の後ろ付近まで順位を上げてきた#1SERTが再び大クラッシュしたのだ。この介入で2台のSCで#11とはグループが分かれてしまったが、8時間を2位で通過し、9ポイントを獲得。
これ以降、レースは終盤に入り、我々とトップ#11のピットストップ回数の違い=燃費計算が徐々に両者に影響を与えてきた。ピットストップのタイミングによって見かけ上1分以上に見える#11との差は、実質的には20秒ほど。それを気にするあまりか、370周を目前に#11がガス欠。代わってトップに立ったのは裕紀だ。8時間経過時点も裕紀のスティントであり、やはり“持ってる”男だった。
これで単独トップとなり、レースは残り1時間の最終盤に突入。#11は周回遅れの3位から追走するが、最後のスティントをジョシュが329.3km/hの最高速をマークしながらもしっかり走り切り、見事優勝を遂げた。前回ル・マン24時間の雪辱を果たし、2020年の同レース2位から最上段に上り詰めた。
今年は表彰台での国歌間違いもなく、無事日の丸を背に君が代が流れたエストリル。その後の記者会見の運営はお粗末であったことを付け加えておこう。
とにかく、これでランキング争いは一気に接戦に転じ、上位陣の差は詰まった。タイトル奪還の鍵は、次戦ボルドール、24時間レースに委ねられた。まずは8月31日から2日間のオフィシャルテスト、レースは9月18日(土)・19日(日)にわたり、ポールリカールサーキット(フランス)で行われる。
【ブルーライダー/ジョシュ・フック】
「3日前にレースに勝てるかと聞かれたら、おそらく勝てないと答えていたはずです。今日、自分たちは強かったわけですが、ウイークを通じて勝つためのペースが得られていないことはわかっていました。今日は本当にラッキーでした。でも、自分たちの可能性を知っていたし、セッティングの一貫性が功を奏したと思います。この1週間、素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝しています」
【レッドライダー/マイク・ディ・メリオ】
「タフな1週間を終えて、このような形でゴールできたことは大きな収穫です。もちろん持久力が大切だし、決してあきらめてはいけません。自分の最後のスティントでアタックできるかどうか自問しながら走っていたら、それが相手にプレッシャーをかけることになり、中にはミスをした人もいました。私たちはすべてを捧げ、最後までやり遂げました。とても信じられない気持ちです」