更新日: 2019.03.28 19:22
現地でも見た気になるヤマハの問題点。オフテストをライダー視点で分析/ノブ青木の知って得するMotoGP
Text:Go Takahashi
レプソル・ホンダ・チームは、もはや高次元すぎて何をやっているのかよくワカラナイ(笑)。エンジンを相当作り込んできたようで、加速性能の高さを維持したまま最高速も高めてきた。公式テストではイマイチ目立ったところがなかったように見えるが、何しろライダーが手負いの状態ですからね……。
それでも何だかんだと上の方につけていることを考えれば、マシンの完成度は総じて高い。特にホルヘ・ロレンソが負っている左手首の舟状骨の骨折はワタシも経験しているのだが、まともにレバーを握ることさえできないはず。体重がかかるブレーキングはかなりキツイはずだ。ロレンソは特にマシンコントロールが繊細なタイプだから、ケガの影響はかなり大きい。
マルク・マルケスともどもフィジカルコンディションが復調すれば、やはりレプソル・ホンダ・チームがチャンピオンの最有力候補だ。何しろ近年のチャンピオン経験者がタッグを組んでいるわけで、ライダーのラインアップは超強力。万一マシンのパフォーマンスが多少見劣りしていても、ライダーの圧倒的実力でなんとかしてしまえる。
そこへきてホンダRC213Vも最高速を高めてきている……ということは、パワーも加速も底上げしているわけで、盤石と言える。マルケスとロレンソによるチャンピオン争いが楽しみだが、ふたりの復調度合いが気になる……。
■技術的な小技を効かせまくるドゥカティ、熟成重ねたスズキ
もちろんドゥカティ勢も侮れない。とにかく技術的な小技を効かせまくっていて、ドゥカティほど面白いマシンもない。カタールでもミッション・ウィノウ・ドゥカティのダニロ・ペトルッチのマシンには何やらいろいろ付いていた。
フロントのカーボンブレーキをカバーしているモノは、空力を考えてのことだろうか? リヤにはトルクロッドとは違う何かを付けていたが、ブレーキング時のフロントへの加荷重を防ぐためのモノだろうか? ナゾだらけだが、いかにもプロトタイプのファクトリーマシンという感じで見応えはたっぷりだ。小技だらけの割にまとまりもイイ。
ただ、ドゥカティのチャンピオン争いに関してはやや首を傾げたくなるのも確かだ。マシンもイイし、力のあるライダー揃いだし、フランセスコ・バニャイアのように勢いのあるニューカマーもいるけど、もうワンランク上を求められるのが世界の頂点というもの。
去年のようにシーズン序盤での取りこぼしがなければアンドレア・ドヴィツィオーゾがランキングトップ争いをすることは間違いないが、やや迫力に欠ける。ペトルッチなんかいいヤツ過ぎちゃって……。チャンピオンになるにはマルケス&ロレンソのようなアクの強さが必要なんだけど、ドゥカティのライダーたちは意外と優等生ばかりなのが気になる……。
公式テストで気を吐いたのが、我らがスズキだ。新人のジョアン・ミルはなかなかのクレバーさでMotoGPマシンに馴染みつつあるし、3年目のアレックス・リンスも落ち着いてテストプログラムをこなした。
スズキGSX-RRの強みは、熟成を重ねた結果到達した奇跡の好バランス。ライダーたちは「コーナリングが武器」と言っているが、シャシーの仕上がりはかなりイイ。ズバリ言ってしまうが、今シーズンは少なくとも1回は勝てるとワタシは見ている。どこで勝つかが、気になる……。
新人たちの活躍にも大いに期待できるし、気になるポイントがたっぷりの2019年シーズンのMotoGP。いちモータースポーツファンとして、開幕戦カタールGPから楽しませてもらいますよ!
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■青木宣篤
1971年生まれ。群馬県出身。全日本ロードレース選手権を経て、1993~2004年までロードレース世界選手権に参戦し活躍。現在は豊富な経験を生かしてスズキ・MotoGPマシンの開発ライダーを務めながら、日本最大の二輪レースイベント・鈴鹿8時間耐久で上位につけるなど、レーサーとしても「現役」。