更新日: 2019.07.11 12:44
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第8回】叶わなかったタイヤの仕様変更と、技術勝負だけでは勝てない理由
F1は、本当に単純な技術勝負では勝てません。チームにきちんとした政治力があって、トップの人がレギュレーション自体を自分たちの有利な方向に動かしていくことができないと勝てないんです。
そういうことを考えると、メルセデスはよくやっていますよね。昨年のトレッドの薄いタイヤを使った3レースと、それ以外のレースでのタイヤの使い方を見比べて、2019年に100%勝つためにはこうしたほうが良いというのがあるからレギュレーションを自分たちの有利な方向に持っていこうとします。今の状況だったらピレリもFIAも同意せざるを得ないかもしれません。
もちろんチームとしての能力もあるので、良いクルマも作れます。でも、もし傲慢な態度を取っていたら、フェラーリの方が良いクルマを作ってきたら負けるかもしれない。その辺りは、メルセデスが抜かりなくやっているのだと思います。
ウチはそれほど歴史もないですし、発言力も強くはありませんが、僕はそのあたりのことはギュンター(シュタイナー/チーム代表)に任せています。彼もこの分野は得意なので、トップチームの影響力には到底敵いませんが、うちのチームの規模なりにいろいろとやってくれています。
予選で速いということは、クルマの基本的な特性は悪くないということです。だからスペインGPでは中団勢のトップを走れましたし、オーストリアでも5番グリッドを獲得しました。ですがそのオーストリアのレースでは問題が明確になったので、次戦イギリスGPに向けて議論を重ねてやっているところです。
すぐに問題を解決できるとは思っていませんし、そうできないことも問題ではありますが、データを採るためにやることは決まっているので、パニックになっても仕方ありません。基本的な解決策というのはそう簡単に見つかるものではないですし、大規模チームでも数レースを要するものだと思っています。
何が悪いのかというのはわかっているので、イギリスGPではとにかくレースに的を絞ってまずは2台でしっかりと金曜のフリー走行を走りたいと思います。
最後になりますが、オーストリアではレッドブル・ホンダが優勝しましたね。僕は昔から田辺(豊治/ホンダF1テクニカルディレクター)さんのことを知っているので、彼が表彰台に乗っているのを見て嬉しかったです。あのようにホンダの上層部の人が表彰台に上がれば、レッドブルはホンダと一緒に戦っているという姿勢を示すことになり、ホンダ側のモチベーションにも繋がりますよね。
また今はプロジェクトから外れていらっしゃいますが、以前率いていた長谷川さんの過去の苦労もあってのこの結果だと思います。おめでとうございます!
もちろん自分たちにとってレッドブルは倒すべき相手ではありますが、今回の優勝は、日本のF1にとっては本当に良いことだと思います。これでもっと日本の人たちがF1に興味をもってくれれば何よりです。