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投稿日: 2019.11.14 11:47
更新日: 2019.11.14 11:48

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第14回】改めて知る高地セットアップの難しさ。連戦を経てようやくマシン不調の原因が明らかに


F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第14回】改めて知る高地セットアップの難しさ。連戦を経てようやくマシン不調の原因が明らかに

第19戦アメリカGP
#8 ロマン・グロージャン 予選15番手/決勝15位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選12番手/決勝18位

 アメリカGPの舞台となるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)ですが、元々安定した土地に建てられていないので、毎年コース上の至るところが沈みます。今年は開催初年度に比べてコースの一部が1.5mも低くなっていたそうです。

 みんな路面の“バンプ”と言っていますが、もう“うねり”と表現した方がよいぐらい状況は酷かったですね。ドライバー達もみな、走り出してすぐに文句を言っていました。来年まともに走るためには相当な路面工事が必要になると思います。

 また今年は寒さの影響もありました。FP1はまるで冬のプレシーズンテストのような低い気温でしたが、あの状況で走ってもクルマ的には悪くなかったです。実はそれ自体も問題だとは思うのですが……ウチは寒ければ寒いほどクルマがいいんですよね。

 ピレリタイヤは表面がオーバーヒートすると使い物にならなくなりますが、フリー走行1回目(FP1)の状況(セッション開始時は気温9度、路面温度16度)だとそういうことも起きませんでした。ロマンはクルマの感触が良いと言っていましたが、やはりこの状況で最もまともに走れてしまうというのも問題です。

 ケビンもFP1ではクルマの感触が良かったと言っていました。ロマンの方が速かったのですが、そういう時でもケビンは予選までには自分もその速さを発揮できるようになると確固たる自信を持っているのが彼の長所です。

 フリー走行2回目では2周目にロマンがクラッシュし、ケビンはテスト用のパーツを投入した際にクルマのバランスを崩してしまい、ほとんどまともなデータが採れなかったのは反省点です。よってフリー走行3回目が実質的な2回目の走行で仕切り直しという感じでした。

 FP3ではケビンの方が最初から感触が良かった一方で、FP1との風向きの違いや路面温度の上昇もあって、ロマンはうまく走れていませんでした。この時点で予選でもロマンがケビンを上回ることは難しいだろうとの予想がついていました。

 その結果ケビンは12番手、ロマンは15番手でした。ケビンはなかなか良く走ってくれましたが、最終コーナーでアンダーステアを出してコンマ2秒ほどロスしたのが痛かったです。

2019年F1第19戦アメリカGP ケビン・マグヌッセン(ハース)
ケビン・マグヌッセン(ハース)

 決勝レースは、ミディアム-ハードと繋ぐ1ストップ作戦でいこうと考えていました。ケビンはレース序盤にキミ・ライコネン(アルファロメオ)やダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)に抜かれて以降ペースが上がらず、ロマンのすぐ前までずるずるとポジションを落としてしまいました。

 17周目にアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)がピットインしたので、これに対応するためケビンを翌18周目にピットに入れ、無事ジョビナッツィの前でコースに復帰することができました。

 これでロマンはケビンに詰まることなく走れるようになったので、どれくらいのペースで走れるのかを確認したかったのですが、ケビンと同じ18周目にカルロス・サインツJr.(マクラーレン)やライコネンもピットに入り、19周目にはピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)もピットインしたので、ロマンはピットアウトしてきた彼らとバトルをすることになりました。バトルによるタイムロスもあり、タイヤも結構摩耗していたので、パフォーマンスもガクッと落ちてしまいました。

 その後は後方から追い上げてきたアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)や2スティント目を走っていたランス・ストロール(レーシングポイント)ともバトルをしたこともあって、この4周くらいの間にピットストップ1回分くらいのタイムロスをしてしまいました。最終的にロマンは24周目にハードタイヤへ交換し、そこから最後までは上手くタイヤのマネージメントをして最後まで走り切りました。

 反省点としては、レース序盤にケビンのペースが上がらなかった時点で、ロマンとポジションを入れ替えるべきでした。チームオーダーのことも考えて、ケビンにはペースを上げるように言ったのですが、全然ペースが上がらずにロマンが10秒以上も詰まってしまったので……。もしこの早い段階でドライバーを入れ替えていれば、24周までロマンのピットストップを遅らせてもアウトラップのクルマとのバトルであれほどのロスにはならなかったはずです。それでもポイント獲得には至らなかったと思いますが、12位辺りでレースを終えられていたと思います。

■ハースF1と小松エンジニアがギリギリのタイミングでつかんだマシン不調の原因


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