更新日: 2020.04.24 18:13
エンジニア出身のチーム代表は26年ぶり。フェラーリ復活のカギはマネージメント/F1レース関係者紹介(4)
フェラーリがチーム代表(マネージャー)にエンジニアを起用することは、これが初めてではない。最近では1993年のハーヴェイ・ホスルスウェイト、その前年の1992年にチーム代表を務めていたクラウディオ・ロンバルディもエンジンが専門のエンジニアだった。
しかしその後、F1はどんどん規模が大きくなり、技術も複雑になっていった。そのため、フェラーリはホスルスウェイト以降のチーム代表には、エンジニア以外の人物を抜擢していった。ジャン・トッドはラリーでの成功を経て、プジョーの監督としてル・マン24時間を制覇した名将であり、ステファノ・ドメニカリは、そのトッド時代のチームマネージャーとして名称を支えた経験を持つ。
またマルコ・マティアッチはフェラーリの北米部門のマーケティングを担当していたし、前任のアリバベーネもフェラーリのメインスポンサーであるフィリップ・モリスのマーケティング畑出身だった。
つまりビノットのチーム代表就任は、1993年以来、26年ぶりの技術者出身のチーム代表という異例の人事だった。
ビノットの特長はスイスのフランス語圏であるローザンヌ出身ということでフランス語のほか、両親の母国語のイタリア語、もちろん英語も流暢に話す。頭の回転が早く論理的で、冷静で失言が少ない。前任のアリバベーネは基本的にイタリア語しか話さず、情熱的で、すぐに感情が顔に出る人物だったから、かなり対照的だといえる。また、ビノットはトッド時代やドメニカリ時代を知るフェラーリの叩き上げという点で、エンジニアからの信頼も厚い。
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その一方で、マネージメントの経験に乏しい。パドックやスターティンググリッド上で話をしている相手も、他チームの代表やマネージメント担当者ではなく、エンジニアというシーンを見かけるのが珍しくない。
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エンジニアは技術的な才能が求められるが、チーム代表は政治的な決断を行うのが仕事。もう少しわかりやすく表現すれば、エンジニアはいかに自分がいい開発をするかどうかが問われ、チーム代表はいいエンジニアをいかに集めるかが仕事となる。
たとえばトッドが行った最高の仕事は、ベネトンからシューマッハとともにロス・ブラウン、ロリー・バーンというエンジニアを引き抜いたことだった。逆にフェラーリを離れたロス・ブラウンは、その後チーム代表としてホンダやメルセデスを率いたものの、期待していたほどの功績が残せなかったのは、目立ったヘッドハンディングを行えなかったからではないだろうか。
今後、フェラーリが復活できるかどうかは、ビノットが他チームから優秀なエンジニアをどれだけ引っ張ってこれるかどうかにかかっていると言ってもいい。
ちなみに最近は、ハリー・ポッターを思わせる丸縁メガネがトレードマークとなっているビノットだが、テクニカルディレクター時代は現在のようなまん丸ではなかったように、チーム代表になってから、外見にもこだわるオシャレな一面もある。
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