更新日: 2020.05.04 12:26
手懸けたマシンは軒並み戴冠。レッドブル躍進の礎を築いた『空力の鬼才』/F1レース関係者紹介(5)
ニューウェイが初めてチャンピオンマシンを手掛けてから、もうすぐ30年が経過しようとしている。マシンのデザインは、どのチームでも多くのエンジニアたちがコンピュータを使用して行っている。そんななか、今年で62歳となるニューウェイは、いまだCAD(コンピュータ支援設計)システムを使わず、2Bの鉛筆と製図板を使ってデザインしている。
それゆえ、ニューウェイは「空気が見える男」とも称されている。
しかし、ニューウェイがいまだにほかのデザイナーと一線を画し、F1のデザイナー界のトップに君臨し続けているのは、その天才的な眼力だけが理由ではない。ニューウェイが机の上でマシンをデザインするだけでなく、できる限りサーキットに来てレースを見て、自分がデザインしたマシンが現場でどのようにセットアップされ、ドライバーからどのように評価されているのかという情報を自分の目と耳で得ようと努力していることも忘れてはならない。
ニューウェイがレースに来たときは、決まってスタート前のグリッドに姿を見せ、ライバルたちのマシンを観察することも欠かさない。それは必ずしもトップチームのマシンだけでなく、下位チームまで隈なく見回る。
自らがマシンに乗り込みレースにも出場する。2007年にはル・マン24時間レースでフェラーリのGTカーのステアリングを握り、総合22位(クラス4位)の成績を収めたこともある。さらに息子ハリソンのレーシング活動もサポート。2018年の12月には、翌年からスーパーフォーミュラに参戦するために行われたテストに参加するハリソンに合わせて来日し、ガレージの中でスーパーフォーミュラのマシンや日本人エンジニアたちが行うセットアップ作業をチェックしていた。
ウイリアムズ時代に53回優勝し、マクラーレン時代は44回、そしてレッドブルで62回の美酒を味わっても、ニューウェイの探究心に終わりはない。そのニューウェイがホンダのパワーユニットに合わせて2020年シーズンに向けてデザインしたRB16。早くサーキットでレースをする姿を見たいのは、ニューウェイだけではない。