更新日: 2021.07.01 18:16
元F1ドライバー、シューマッハーの前半戦に高評価も「子犬のようにメディアに保護されている」と懸念
「今シーズンを振り返ってみると、ミックはチームメイトと違って自分の実力を発揮できている」とこちらも好評価を与えるラルフ。だが、彼にとってはチーム内バトルが加熱するハースの状況が気がかりだという。
アゼルバイジャンGPとフランスGPの2戦続けて、接触スレスレのバトルを繰り広げたハースの2台。レース後には海外メディアに対して両ドライバーがチームメイトへの不満を語る場面も見受けられた。
ラルフは「ハースにとって唯一の悪い点は、このような状況から無意味な事故が起こり、実際に開発に緊急に必要な資金が使われてしまうことだ」と述べ、ハースの現状を危惧する。予算不足に悩まされてきたハースだけに、チーム内でのバトルが不用意に加熱してマシンを壊すことはあってはならないこと。ラルフはこの状況をチームが制御する必要があると訴えた。
続いては、ウイリアムズやBMWザウバーなどからF1に参戦し、フォーミュラEの初年度から4シーズンにわたって活躍したニック・ハイドフェルド。シュポルト1のインタビューを受けた彼もミックについては「いい仕事をしている」と評価するが、ラルフと同様こちらも気になる点があるようだ。
「僕が気に入らないのは、彼が子犬のようにメディアに強く保護されていることだ」。そう切り出した彼は、ミックが結果以上に騒ぎ立てられていると警鐘を鳴らす。
「誰もが新たなシューマッハーの活躍を期待しているのは明らかだ。でも彼のF1キャリア最初のオーバーテイクは、まるで世界で一番素晴らしいことかのように誇張されていた。外から見てるとちょっと大げさだよね」
ハイドフェルドの意図はもちろん、ミックが実力以上の評価を受けていると批判することではない。実際のところ、マシンの戦闘力の低さゆえにミックの実力はまだ完璧に示されているとは言い難い。ハースの2台はレースでは常に中団勢に遅れをとり、最後尾をランデブーで走ることがほぼ確実になっているからだ。
ハイドフェルドが気にしているのは、彼がライバルと互角に戦えるマシンを手にしたときのことだろう。そこでは彼の真価が問われ、もし仮に期待通りの結果を残せなければこれまでのような高い評価を受けることは厳しくなる。ハイドフェルドのコメントの真意は、彼がメディアから批判の矛先を向けられたときへの懸念というのが正しいようだ。
「もちろん悪いのはミックではないし、好評価が得られるのはいいことだ。でもいつかその評価がガラリと変わる危険性だってもちろんある」
様々な意見が飛び出したが、全員に共通していたミックのパフォーマンスへの高い評価だ。戦闘力に劣るマシンに乗りながら完走を重ね、常にチームメイトを上回っているミックに対しては、歴戦の元F1ドライバーたちからも及第点以上といったところだろう。ミックの今シーズンはまだまだ長い。彼がこの先どんなレースを見せてくれるのか期待が高まる。