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投稿日: 2021.11.12 15:00
更新日: 2021.11.12 15:05

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第18回】メキシコ独特のコンディションにもうまく対処。予選の問題は方針を変えて解決


F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第18回】メキシコ独特のコンディションにもうまく対処。予選の問題は方針を変えて解決

 そんなメキシコでの予選ですが、アタックポジションを巡ってニキータから「ミックを抜いていいか」と問われるシーンがありました。そもそも僕たちは、ニキータとミックのどちらが先にピットから出ていくかを、公平になるように毎戦入れ替えています。一度問題のあったオランダGPではニキータが先で、ミックが後でした。アウトラップでのタイヤの準備の仕方がふたりの間で少し異なり、ミックから前のニキータを抜かせてほしいと言われたので、この時は3コーナー出口で抜くのならOK(要はアウトラップ序盤ならOK)と許可しました。

 しかし、これが予選後に問題になったので、それからはアウトラップで順番の入れ替えはしないと方針を変えました。前戦アメリカGPでは先行していたニキータの前に何台もクルマがおり、アウトラップはかなり遅くなりました。その後ろで残り時間を気にしていたミックは「前にいかせてくれ」と言いましたが、オランダ以降に決めたルールに沿って「ニキータの後ろでアタックラップの準備をするように」と伝え、ミックはぎりぎり残り9秒でアタックを開始しました。

 メキシコではミックが先で、今回はニキータが「前のミックが遅いから抜かせてくれ」と言いました。担当のエンジニアが「それはできないから、そのまま後ろにいるように」と伝えたところ、なんとニキータは「冗談でしょ?!」と返答してきたのです。ですから僕がラジオで直接「全然冗談じゃないよ。スペースを作りたいんだったら、今バックオフしてスペースを作って」と指示を出しました。ニキータはすぐにスペースを作り、アタックラップにはタイヤ温度もトラックポジションもほぼ最適の状態で入ることができました。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第18戦メキシコGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 ミックが比較的ゆっくり走っていた理由は、彼の前にもクルマがいたからです。チームは各車の位置をGPSで把握しているので、全体を見て指示を出しています。そんな話もこれまでに彼とは何回かしているのですが、どうもすぐ忘れてしまうようです。

 ちなみにミックはそのアウトラップのセクター2で速く走りすぎてタイヤの温度を少し上げすぎてしまい、またアタックラップの最後で若干トラフィックにも遭いました。逆にスペースを作るために速度を落としたニキータはタイヤ温度もよかったですし、まったくトラフィックにかからずアタックを終えることができました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第18戦メキシコGP ミック・シューマッハー(ハース)

 ニキータはチーム内でルールが違うとも言っていたようですが、もちろんそんなことはありません。ニキータはアメリカGPの予選でミックが黙って後ろで走っていたことをわかっていなかったようです。予選直後にはギュンター(・シュタイナー/チーム代表)と、ニキータの件について何が起こったかを話し合いました。またブラジルに来てからこのことをふたりでゆっくりと話しました。

■ミックとのス差を縮めるには予選練習での“積み上げ”が必要なニキータ


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