更新日: 2021.06.03 21:39
エリオ・カストロネベス、4度目となるインディ500制覇の鍵は“ラインを変えても戦えるマシン”
その琢磨は、今年も最終的には優勝争いに絡んでいけるかも……という走りを見せていた。5列目アウト側の15番グリッドからのスタートだったが、そこまでの戦いを可能にしたのは、燃費をセーブして走っていた第1スティント終盤に最初のフルコースコーションが出され、すでに1回目のピットインを済ませていた多くのライバルたちの前に出られたことも大きく味方していた。
だが、もう少しのスピードをなかなか獲得できず、歯痒い戦いが続いていたのも事実だった。それを見たチームは、“スピードで優勝をもぎ取るのが不可能なら、燃費作戦というギャンブルに出よう”という決定を下す。琢磨はコクピットからそのアイデアが実現不可能であることを何度も説明し、反対の意向を述べ続けたが、琢磨の主張が受け入れられることはなかった。
そして、心配していたとおり、ゴールまであと6周となった時点で燃料切れに陥り、194周を終えてピットロードへ。これで琢磨は、トップから14番手までダウン。そのままゴールするしかなくなった。
「燃費作戦の採用を決める少し前、僕は6~7番を走っていました。カストロネベスのすぐ後ろのポジションでした」と、琢磨はレース後に悔しさをあらわにした。
「ピットストップがまだ2回残っていたんです。それはセッティングを変えるチャンスが2回あったということで、タイヤも新品を2セット投入する用意ができていたのですから、それらを行って、上位のドライバーと勝負したかったですね。戦いたかったのに戦えなかったのが本当に悔しいです」
チームのピットが選んだストラテジーには納得できないという様子で、琢磨らしからぬ不完全燃焼のインディ500となってしまった。琢磨陣営が採った燃費ギャンブルの作戦が成功し、優勝するためには、数周のフルコースコーションが必要だった。そのイエローが少しでも長くなりすぎると、同じ作戦を採って琢磨より前を走っていたローゼンクビストに優勝の振り子が大きく傾くという状況でもあった。
つまり、ローゼンクビストの燃料タンクが空っぽになって彼がピットに向かい、琢磨がトップを譲り受けたところでフルコースコーションが出る=昨年のようにスロー走行のままチェッカーフラッグとなるという場合にしか勝てないという、少々楽観的すぎるアイデアだった。残念ながら、これは作戦ミスとの評価を受けても致し方ないだろう。
ニュータイヤ+燃料フルリッチのオーソドックスなバトルを続けていたら、琢磨はオワードのあたりでのフィニッシュができていたのではないだろうか。それは4位。オワードを下し、パジェノーとのバトルでも勝てていたら、3位フィニッシュとなっていたはずだった。