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投稿日: 2019.11.25 12:53
更新日: 2019.11.25 16:08

衝撃シーン連続のスプリントバトル。ドライバーの理性を狂わせた魔性のインディ・スタート《特別交流戦レース2あと読み》


スーパーGT | 衝撃シーン連続のスプリントバトル。ドライバーの理性を狂わせた魔性のインディ・スタート《特別交流戦レース2あと読み》

 ホンダ、レクサスに続いてニッサン陣営としては、この特別交流戦ではホッケンハイムに続いて厳しい戦いとなったが、それでもMOTUL AUTECH GT-Rの松田次生は11位フィニッシュながらレース全体については好意的に捉えている。

「レースは面白かったですけど、ちょっとサバイバル過ぎましたね。特にインディ・リスタートはみんなサバイバル過ぎて、1回目はそうでもなかったけど、2回目、3回目とみんなどんどんヒートアップしていった。みんな血の気が多くなっていたけど、僕は敢えて引いていました」

「スプリントバトルで最初はみんなお互い当てないようにしていながら、どんどんヒートアップしてきていましたね。インディ・リスタートで接近していることで、みんなヒートアップしちゃった。何度もインディリスタートをしているとドライバーもどんどん慣れて距離が詰まってきて(心の)スイッチが入る。僕もスイッチが入りながらも、そこは一歩冷静に引いていました。前も後ろも『このクルマ止まれるのか!?』というシーンが何度があって、そのままぶつけられたりもしました(苦笑)。僕は避けていたんですけどね……」

 次生はちょうど、13コーナーでのレクサス陣営の同士討ちの後方で目撃することになった。

「13コーナーでのレクサス勢は、このままだと絶対に当たるだろうなと思っていたら、やっぱり当たっていました。僕が見た時は19号車(WedsSport ADVAN LC500)と6号車(WAKO’S 4CR LC500)が絡んで回っていて、僕はその隙をかすめてうまく前に行くことができました」

 同じくニッサン陣営の中で、接触を受けて止まってしまい、18番手に終わった3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平にも今回のレースの印象を聞いた。

「結局、残り時間が少なくなってみんなニュータイヤに履き替えたりしているタイミングでの(3回目の)インディ・リスタートで、みんな目の色が変わっていた。最初の平和なインディ・スタートから、最後のインディ・リスタートは雰囲気が違っていましたね。もうみんなが1コーナーに向けてゴリゴリゴリと前に進む、みたいな。『このドライバー、さっきまでそんなんじゃなかったよね!?』みたいな。インディ・リスタートも何度か繰り返すうちに精度が上がって、みんなやる気満々のスイッチが入ってしまった」

 レクサス陣営の同士討ちを招くきっかけの1台となってしまい、40秒加算のペナルティを受けて16位に終わったWedsSportの国本雄資も、インディ・スタートでは貴重な体験をすることができた。

「インディ・スタートは楽しかったです。最初のスタートでは行き場がなくて何もできなかったですけど、2回目は4台くらい抜くことができた。3回目は両側から挟まれて、右に左にぶつかるすごい状況になってしまった(苦笑)。でも、ガチャガチャがチャと前も後ろもぶつかりましたが、以外と密集しすぎてぶつかっているので誰もスピンしないんだなと。クルマのパーツは壊れてしまいましたけど、ドライバーとしては楽しかったですね」

 その3度のインディ・スタートを経て、結局DTM勢はリタイアはゼロで、参戦した7台のうち6台がトップ10入り。ザナルディも13位でフィニッシュし、サバイバル戦での強さを証明する形となった。ARTA野尻が今回戦ったDTMドライバーの特徴を話す。

「DTMドライバーについては、インディ・スタートでそこまでガツガツしていない分、どこまで行ったらクラッシュしてしまうのか、バトルでもマシンのタイヤの限界点をすごくわきまえている感じがあった。結局、今回のレースで止まっている車両は日本勢ばかりですよね。インディスタートも向こうは慣れているというのもありますけど、接近したときのギリギリの見極めがうまいのかなと思います。そのあたりはダウンフォースの大きい日本のクルマで接触はしずらいですし、レーススタイルの違いでもあると思いますね」と野尻。ダウンフォース重視のスーパーGTとメカニカルグリップ重視とも言えるDTMのマシンの違いからくる戦い方の視点は興味深い。

 とはいえ、クルマの特性は違えどもレース終盤、インディ・スタートによって目の前に獲物が接近すれば、その獲物を狩りに行きたくなるのはレーシングドライバーの本能。国籍関係なく、スーパーGTドライバーたちもインディ・リスタートの非日常的な距離感と、儀式的とも言える超低速走行からの急加速によって、いつも以上に攻撃的マインドが増幅され、グリーンシグナルとともに本能が全開放されることになったとも言える。
 
 今回の特別戦によって、コンペティションタイヤのパフォーマンスの高さ、そしてGT300マシンとの混走の素晴らしさなど、改めて普段のスーパーGTのシリーズ戦の魅力を再確認するとともに、今回のDTMフォーマットベースのスプリントバトルは、通常のスーパーGTのシリーズ戦では見ることのできない景色を体感することができた。

 運営資金やロジスティックス、細かいレギュレーションの折り合わせなど難題は多かったが、今回のレースを見て、もう一度見てみたいと思うのは素直なファンの心。毎年が難しいならば、2年に一度でも構わない。今回成し遂げたゼロからの1歩目のDTMとの特別交流戦。次の2歩目の開催が早くも待ち遠しい。


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