更新日: 2020.08.04 18:44
スーパーGT:開幕戦トップ5を独占したスープラの強さの秘密と浮かび上がったClass1の最適解
TGR TEAM ZENT CERUMOの石浦宏明は「LC500とはコンセプトが大きく変わったと説明されたが、乗ってみたら最初から違和感なく走れた」と語る。
ハイレーキにすれば、どうしてもリヤの荷重は軽くなる。それを補うためサスペンションのセッティングを大きく変える必要があったようだが、ハンドリングに関してはLC500よりも安定感が高まり、むしろ良くなったという評価が多かった。
ハイレーキのデメリットとしては、全面投影面積が増えることなどにより、ドラッグが増すことが挙げられる。
ドラッグが増えればストレートスピードは伸びなくなり、実際、スープラ勢のなかでもレーキアングルが強いマシンは最高速が伸びなかった。
とはいえ、その差は最大5km/h程度であり、コーナー等で補えるのであればハイレーキも有効であると、トムスの東條力エンジニアは言う。
「スープラはそういう前提で設計されたクルマだから、レーキをつけても速度低下は意外と少ない。LC500だったらもっと差がついていた。だから、富士ではレーキを強めたハイダウンフォースと、フラットに近いローダウンフォースのどちらもアリだと思います」
ハイレーキでもリヤのバネを柔らかくしたり、ジオメトリーを調整するなどしてリヤを沈ませて姿勢をフラットにすれば、直線でドラッグを低減できる。重要なのは、全体のバランスだ。
スープラ勢のなかで、練習走行から予選まで一貫してハイレーキを貫いたのは、3位に入ったWAKO’S 4CR GRスープラだ。昨年、WAKO’S 4CR LC500をチャンピオンに導いた阿部和也エンジニアは、テストからハイレーキを前提に開発を続けてきたようだ。
リヤウイングに関してもかなり立てており、そのため最高速は他のスープラに比べて伸びなかった。それでも第3セクターの速さと、ブレーキングスタビリティの高さを生かし、決勝ではトムス勢に迫る速さを披露した。
ZENT GRスープラやヨコハマタイヤを履くWedsSport ADVAN GRスープラもハイレーキを採用していたが、一貫性はなくWAKO’S 4CR GRスープラほど仕上がりは良くなかった。
また、山下健太のスポット参加で注目を集めたDENSO KOBELCO SARD GRスープラは、やはりハイレーキを試すもうまくいかず、フラット気味に戻したが最後まで最適解を得られなかったようだ。
一方、トムス勢はWAKO’S 4CR GRスープラほどハイレーキではなかったが、特にKeePer TOM’S GRスープラは全体のバランスに優れ、直線もコーナーも満遍なく速かった。
なお、ダウンフォースバランスに関してはKeePer TOM’S GRスープラの方がややレーキがきつくフロント寄りで、au TOM’S GRスープラは後ろ寄りだったという。
阿部エンジニアは「決勝ペースには自信がありましたが、KeePer TOM’S GRスープラには敵いませんでしたね。次の富士に向けてコンセプトを見直すことも検討しています」と、素直に負けを認めた。
KeePer TOM’S GRスープラの完成度の高さが光った開幕戦だったが、果たして次の富士ではどうなるか? 各車のレーキアングルを見れば、どの方向を目指しているのか、ある程度見えてくる。第2戦でも、ピットレーンでのレーキアングル観察を続けたい。