更新日: 2024.03.29 12:18
佐藤万璃音 2024年WEC第1戦カタール レースレポート
WECデビューで再確認できた佐藤万璃音のアダプタビリティとマクラーレンLMGT3の速さ
ヨーロッパのミドルフォーミュラで日本人として17年ぶりにチャンピオンに輝いた佐藤万璃音(横浜市出身・モナコ在住・24歳)は、本年度、新たな挑戦の場としてWEC世界耐久選手権シリーズにユナイテッド・オートスポーツからフル参戦。マシンは新たに開発されたマクラーレン720S GT3エボを使用し、万全の体制で臨むこととなりました。
佐藤万璃音は昨年、初挑戦のELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズLMP2クラスで3勝を挙げてシリーズランキング2位となり、その実績をユナイテッド・オートスポーツとマクラーレンに認められ、急きょWEC起用となりました。
2月29日から3月2日にかけてカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットで開幕した2024年WEC第1戦『カタール1812km』は、シリーズ初開催のサーキットということもあり、事前公式テスト“プロローグ”が実施されましたが、海上輸送のトラブルで多くのチームの車両が届かず、セッションは予定より遅れて2月26日から27日にかけて開催されるという、まさにギリギリでの開幕戦となりました。
ユナイテッド・オートスポーツ&マクラーレンにとっては、海運リスクも想定内でロジスティクスを手配し、当初の開催スケジュールに合わせて問題なく車両も装備品もすべて到着していたため、細かな整備やトレーニングにじっくりと時間がかけられる状態で、準備を整えて開幕戦を迎えることとなりました。2月29日、12時10分から実施された90分間のFP1で、佐藤万璃音のチームメイトであるニコ・ピノ選手が1分55秒824をマーク。マクラーレン720 GT3エボは、今季からスタートした新カテゴリー、LMGT3クラスの記念すべき最初のトップタイムをマークする速さをみせました。
FP2では佐藤万璃音が1分55秒593を刻み、5番手タイム。チームは決勝に向けて着実のテストメニューをこなしつつ、ニューマシン特有の初期トラブルに対応して予選前の最後のセッション、3月1日午前11時から60分間で実施されたFP3では1分55秒367を刻み、7番手でセッションを終えました。
予選は3月1日の10時からスタートし、12分間の予選セッションでトップ10に入った車両が上位グリッドを決する最終予選“ハイパーポール”へと進む2段階方式です。予選は、両セッションともブロンズドライバーが出走する義務が課されており、ジョシュ・ケイギル選手が駆る95号車マクラーレンは9番手で通過。続くハイパーポールでは1分55秒836をマークし、決勝8番手グリッドからのスタートとなりました。
3月2日、WEC第1戦『カタール1812km』は、佐藤万璃音にとって初めて経験する10時間にも及ぶ耐久レースです。LMGT3クラスは9メーカー、18台で争われるカテゴリーです。11時のスタートから、セーフティカー(SC)や赤旗中断という大きなトラブルはなく、思いの外順調にレースは展開しましたが、95号車マクラーレンは途中、長くガレージで吸気系やセンサーといったニューマシンにありがちの初期トラブル修復作業でタイムをロスし、最終的には佐藤万璃音がステアリングを握って初のWEC挑戦で、13位完走のチェッカーを受けました。
■佐藤万璃音のコメント
「自分にとって国際レースが初めてというわけではなかったですが、WECはとても長いレースで、スタートから一度も走ることなくガレージで5時間待つというようなレースは経験したことがなかったです」
「マクラーレンのマシンは完成度が非常に高く、クルマの動きも他のLMGT3クラスのマシンに比べて軽やかでしたし、エアロデザインが良くて高速コーナーは本当に速いマシンでした。ただ、BOP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)が厳しかったですね」
「マシンのデリバリーが遅れたために12月にテストができず、それが原因でいわゆる初期トラブルがレース中に出てしまったのが敗因ですが、レース中のペースはクルマもドライバーも含めて良かったですし、初めてのWECでチームは2台とも完走できたので、チームにとっては、ポジティブな結果でした。今回初のWECで感じたことは、長距離とはいえSCも出ませんでしたし、ミスしたら取り返せないシビアなレースだなということです。ほんの僅かなミスも許されないからこそ、世界耐久選手権なのだと思いました」
「それでも我々は勝てる体制だと思いますし、マクラーレンのアップグレードも楽しみです。次戦イモラは得意なサーキットのひとつですし、結果を残すべく頑張ります」