更新日: 2019.09.24 14:12
フェラーリ会心のアップデートとベッテルを優勝に導いた“緊急ピットイン”【今宮純のF1シンガポールGP分析】
さらにタイムを追及すべく、ふたりはFP2でドライビングリズムを変えていった。ルクレールはコーナー入口でアンダーステア気味、ベッテルは出口でオーバーステア傾向。この挙動からは、イニシャル・セッティングからさらなるファイン・チューニングのための挙動データを収集すべく、方向性を分けたとも想像できる。FP2は3番手と6番手だがセクター1は“1-2タイム”を堅持。
一夜にして奇跡は起こせるのか。土曜FP3、ルクレールが一気にセクター1と3最速でトップへ。昨日のアンダーステアがきれいに消えている。<シャープIN~スムーズOUT>、個人的に昨年会心のPPラップを魅せたハミルトンに近いと思った。
ルクレールは予選Q1:1分38秒014(3番手)→Q2:1分36秒650(トップ)→Q3:1分36秒217(PP)と刻み上げていった。3戦連続5回目PPの平均スピードは189.434KMH、中速コースで彼とSF90が真価を発揮したのだ(ちなみにモンツァPPは262.962KMH、スパPPは245.948KMH)。
この予選で気付いたこと。直線絶対優勢のフェラーリなのに、2番手マシンとの速度差がほとんどなかった。ベッテルがすべてのセクター最高速をマークしたのだが、セクター1では2番手、カルロス・サインツJr.と“0.9KMH差”、T地点(1コーナー手前150M)では彼のマクラーレン・ルノーとイーブン。参考までに昨年ベッテルは311.6KMH、それが今年は308.3KMHに低下している。
このデータから推察すると、彼らはアップデートによるフロント・ダウンフォース向上に合わせ、リヤもプラス方向にシフトしたのではないか。ひと言で言うなら、「必要十分な直線速度とコーナー速度の両立」――。

マリーナベイ“2時間マラソン”のように、ゆっくりしたペースで始まった61周レース。長い隊列のまま周回がつづけられ、19周目に動きが。4番手フェルスタッペンがピットイン準備、それを見たフェラーリは21コーナー付近にいたベッテルに“緊急ピットイン”を指示。そして次の20周目にルクレールを呼び込む。
ふたりのインラップとアウトラップを比べよう。ベッテル19周目:1分56秒992、20周目:2分06秒109。ルクレール20周目:1分57秒053、21周目:2分07秒019。ベッテルの前には空間があり、21周目:1分45秒455で飛ばしチームメイトをアンダーカットする展開となった。