更新日: 2019.08.03 02:17
【コラム】残り2分で大荒れの鈴鹿8耐。混乱を招いた赤旗のタイミングとレギュレーション
S.E.R.T.のマシンはいったんはコースアウトしたものの、再びコース上を走行。S字コーナーでマシンを止めた。レースは残り5分。オイルが噴出していたことはほぼ間違いない状況で、降雨があったこともあり、路面は極めて滑りやすかったと思われる。
このアクシデントにより、即時オイル旗が提示されたものの、赤旗やセーフティカーは導入されず、レースは続行。
その直後、いったんはKawasaki Racing Team Suzuka 8H(このとき走行していたのはジョナサン・レイ)も現場を無事に通過している。19時30分のレース終了まで残り2分を切ってコントロールラインを通過し、事実上のファイナルラップとなった次の周回のS字コーナーで、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hは転倒を喫し、その数秒後に赤旗が掲示された。
![サーキットのビジョンに映し出されたジョナサン・レイの転倒シーン](https://cdn-image.as-web.jp/2019/07/28195125/IMG_2233-660x440.jpg)
時系列で整理すると以下のようになる。
19:14 ピットインしたS.E.R.T.のマフラーから炎が確認される。
19:24 S.E.R.T.がストレートエンドで白煙を上げる。オイル旗提示。S.E.R.T.は30秒ほどコース上を走行。
19:28 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hが転倒。赤旗提示され、そのままレース終了。
19時28分時点での赤旗提示の理由は不明だ(レースディレクションには赤旗提示の理由について説明義務がないとされているようだ)。Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hより先、19時25分過ぎにHonda Suzuka Racing TeamがS字コーナー付近で転倒しており、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hと併せて複数台の転倒を危険とみなしたことが赤旗の提示理由かもしれない。
だが、前後数分間でもっとも危険性が高かったのは、S.E.R.T.のマシンが白煙を噴きながらコース上を走行していた時だということは間違いない。オイル旗は提示されていたが、結果から言えば、より迅速に赤旗提示もしくはセーフティカー導入を決断すべきだった。
白煙が上がった後、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hも1度は現場を通過していることからも、19時28分に発生したレイの転倒がオイルによるものかどうか、正確には分からない。ただ、Honda Suzuka Racing Teamがほぼ同じ場所で転倒していること、そしてあの白煙の上がり方からすると、相当量のオイルが撒かれているものと考えられるのが妥当だ。
![Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hのジョナサン・レイの転倒により赤旗で終了となった2019年の鈴鹿8耐](https://cdn-image.as-web.jp/2019/07/28194056/IMG_2165-660x440.jpg)
19時28分にレイが転倒した際には、わずか数秒後に赤旗が提示された。その迅速さにはやや不自然さもある。Honda Suzuka Racing Teamの転倒、あるいはさらに遡って白煙が上がったことに対して赤旗を提示しようとしていたところに、偶然、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hの転倒があった可能性も否めない。
いずれにしても問題視すべきなのは、19時28分に提示された赤旗よりも、白煙が上がった19時24分の時点でいち早く赤旗提示もしくはセーフティーカー導入が行われなかったことである。この状況での判断について、現在、大会事務局に確認を取っている。
本記事においては、S.E.R.T.の行動について批判するつもりはない。ライダーがあれほど盛大な白煙を確認し、オイル噴出の可能性を感知したなら、速やかにコースアウトしてマシンを止めるべきだったのではないだろうか。
だが、S.E.R.T.にとっては世界耐久選手権(EWC)のチャンピオンが目前の最終戦、しかもチーム監督引退レースの終了間際という状況だった。そこでトラブルが発生したら、ライダーが「どうにか走り切りたい」と思ってもおかしくはない。
これは大変な誤りであり、ライダーを責めることは容易だ。しかしこういったヒューマンエラーが起こり得る可能性も考慮しながら、迅速かつ最適な対処方法を繰り出すことが今後のレースには必要になる。