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投稿日: 2018.06.13 13:44

ロリー・バーンが語る栄光のマシン。“バーン・エアロ”の集大成、『フェラーリF1-2000』


F1 | ロリー・バーンが語る栄光のマシン。“バーン・エアロ”の集大成、『フェラーリF1-2000』

 F1-2000の細部には、実に多くのロリーらしさが滲んでいる。サスペンションアームの多くはフルカーボンで、金属のエクステンションやブラケットをつながない。

「F310Bでは、サスペンションアームやコンポジット製品に問題が多数発生した。その原因の多くはボンディング加工にあり、金属とカーボンの接着部分が剥離を起こしていたのだ。カーボン同士の接着ならあまり問題にならないのだが、金属とは相性が悪く、ずいぶん壊れたよ」と、当時コンポジット製品に対して苦しんでいたことを明かす。

「したがって、フルカーボンがその答えになった」

 さらにカーボンギヤボックスについて尋ねると、「ギヤボックスはカーボンじゃない。チタンを使った金属製さ。君たちが言うカーボンギヤボックスとは単にケーシングのことで、ギヤボックスではなくサスペンションホルダーなんだ」と我々の認識の違いを修正する。

 このカーボンサスペンションマウントケーシングには、独特なサスペンションがマウントされている。F1-2000には真っ先にザックス製の貫通ダンパーが搭載されており、この年のフェラーリ専用であった。

「もちろん、ザックスとの共同開発だ。ダンパー性能というよりもリザーバータンクがない分、コンパクトで軽量なことがエアロにも軽量化にも効果的だった」

 98年のF300でロリーは、水平パラレルマウントのトーションバースプリングをフロントサスペンションに採用した。いみじくも同年、マクラーレンのエイドリアン・ニューウェイが同じくこの手法を採用している。

「この方式は、グスタフ(ブルナー)が作り出したアイデアだ。効果的でスペースセービング、その後はすべてのチームがこの方式となったよ」

ザックスと共同開発の貫通ダンパーが採用された

 00年のチャンピオンシップは白熱したが、マクラーレンを駆るミカ・ハッキネンとの熾烈な争いに競り勝ち、フェラーリ&ミハエル・シューマッハーは第16戦日本GPでチャンピオンを決めた。中盤戦でハッキネンに追い上げられたものの、終盤の4連勝で突き放している。

「マクラーレンとハッキネンは、実に手強いライバルだった。彼らと我々ではマシンコンセプトがまったく違うのだが、互角の戦いを繰り広げていた。実はあの時、我々の方がマシンの戦闘力で勝っていたことが近年になって分かったんだ。数年前にマクラーレンからパット(フライ)がフェラーリに移籍してきた」

 フライは当時、テクニカルディレクターとしてフェラーリに在籍していたが(14年にチームを離脱)、それ以前はベネトンでロリーの部下として働いていた人物だ。

「彼といろいろ話し合ったのだが、そこで初めてマクラーレンの弱点を見つけたんだ。決してエアロではないよ。それが何かは決して話さない。これは私の一生の秘密さ」とロリーは笑う。彼がニューウェイ・マシンに見つけた弱点、フェラーリが勝っていた要素……知りたいのは山々だが、ロリーは笑うだけで、それ以上は語らなかった。

■優れた状況分析と表現能力


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